あたしと仙之助の名が呼ばれ小さん師匠と馬生師匠「はい」
太神楽でおなじみなのは、傘の上で毬や金輪、升、湯飲み茶碗などを回す曲芸だ。これにも難度の違いがあるとか。
「一番難しいのは金輪ですね。毬よりもすべるので油断してると倒れちゃう。回しながら、口上方が『お客さまの金回りがよくなりますように』と言います。升を回す時、『四角い升がまーるく回りまして、ますますご繁盛!』と言うのは、5合升は1升の半分、半升ですから、繁盛と掛けてるんです。口上で縁起の良い言葉を使うのが祝福芸たるゆえんなんでしょう」
確かに、金回りがよくなって、「ますますご繁盛」と言われれば、寄席の客は悪い気はしない。受けるはずだ。
「寄席に出始めた頃、楽屋で面白いことがありました。小仙親方はあたしを『盛夫』、仙之助さんを『澄』と本名で呼びます。2人の名前を続けて呼んだら、楽屋にいた柳家小さん師匠(写真右)と金原亭馬生師匠(同左)が、『はい』って同時に返事したんです。小さん師匠は小林盛夫、馬生師匠は美濃部清が本名ですから。それ以来、親方も芸名で呼ぶようになりました(笑い)」