影山貴彦
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影山貴彦日本笑い学会理事

同志社女子大学学芸学部メディア創造学科教授。1962年、岡山県生まれ。86年毎日放送入社、「MBSヤングタウン」などを手がける。ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査委員、GAORA番組審議会委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」(実業之日本社)など。

コロナ禍で再認識 エンタメの意義は人を元気にすること

公開日: 更新日:

 先月29日、今月1日にライブを決行した椎名林檎がバッシングにさらされている。自粛ムードの中、手洗い、マスクの着用など衛生面を徹底して実現し、英雄視されたかと思ったら、今度はSNSを中心に不謹慎だという意見に風向きが変わったのだ。LGBTQを含め、時代はダイバーシティー(多様性)をうたっているのに、SNSを通すと全否定される。テレビ業界も視聴率を取りたいがために受け手が望んでいない刺激性を求め、他者を否定する片棒を担いでいる感もある。

 エンタメが品行方正でなければならない、という考え方は表現の自由と真逆でエンタメの存在をも揺るがす問題である。僕がテレビ・ラジオの現場から大学に職を移した理由は、社会的に軽視されているエンタメの地位を向上させたいという気持ちからなのだが、世間がこうだから右に倣え、と言われるのは、やはり軽視されているからだろう。

 新型コロナのおかげでテレビやネットを見る機会が増える半面、日本にどんどん不安と恐怖が広がっている今だからこそ、元気になれるエンタメが必要だ。9日から宝塚が再開したが、前日の宝塚はやや緊張した空気が漂い、関係者の大いなる苦労がしのばれる。方々からの意見や圧力はあると思うが、阪神・淡路大震災で被災した宝塚だからこそ、身をもって知っている“エンタメの存在意義”を見せて欲しいと思っていたのだが、再び延期が決定してしまった。

 もちろん、そのためのルール化は必要だろう。座席の間隔を空ける、1列空けて使う、不安を持つ客には払い戻しに対応するなど指針を示し、賛同する人が演劇やライブを鑑賞すればいいのではないか。

 事態が終息した暁には、一連の赤字補填を高らかに、海外の「ライブエイド」のようなビッグアーティストが一堂に集まるイベントを開催して欲しい。日本は募金事業となると「24時間テレビ」のようにシリアスに扱わなければいけない、涙が伴わなければならないという風潮が根強い。こういう場面になればなるほど、ネガティブな幸福感というか、恵まれている人への攻撃性が増してしまう。だが本来、エンタメは見る者の心を明るく、笑顔にし、金銭的にも潤わせることが望ましい。SNSで発信を続けているYOSHIKIらが機を見て音頭をとれば、まさに笑顔で楽しむ救済イベントが実現できるのではないだろうか。

 教え子の中にも東京オリンピックを「YouTubeで見ます」「ネットで十分です」という学生も増えている。現場主義で育った僕からすれば、メディアを学ぶ者として少々寂しくもあるのだが、それもエンタメの見せ方のひとつかもしれない。リモートで楽しむ層にリーチする手法の担い手になれば、それもありだろう。そんな若い世代が、メディアを使った新しいエイドのスタイルを充実させてくれるのだと信じたい。

 いずれにせよ、エンタメの最大の意義は「人を元気にさせること」「笑顔にすること」。明日も生きていこうと思わせることなのだ。この厳しい状況だからこそ“エンタメここにあり”を全ての人に知らしめるチャンスと捉えたいと強く念じている。 =おわり

(構成=岩渕景子/日刊ゲンダイ)  

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