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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

天海祐希「緊急取調室」“取り調べ不能な容疑者”こそもう一人の主役なのだが…

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 オリンピックが終わり、テレビに通常編成が戻ってきた。第3話までで止まっていた、天海祐希主演「緊急取調室」(テレビ朝日系)も、ようやく今週から再開となる。

 思えば第4シーズンとなる今回、このドラマは開幕から攻めていた。2週連続で扱われたのはハイジャック事件。犯人は70年代の「伝説の活動家」大國塔子。しかも演じたのは桃井かおりだ。

 50年も潜伏していた彼女が、なぜハイジャックなどしたのか。その真相もさることながら、見どころはやはり真壁(天海)による塔子の取り調べだ。

 塔子は、「権力の手先」である真壁を歯牙にもかけない。得意の弁舌で押したり引いたりの独壇場。途中、塔子が真壁にコップの水をあびせるシーンなど、「なめんじゃないわよ、私を誰だと思ってんの!」という桃井VS天海のリアル女優対決に見えたほどだ。

 この「桃井編」に比べ、岡山天音神尾楓珠がプロボクサーを演じた第3話は、残念ながら弱い。オリンピックに合わせたスポーツネタとはいえ、犯人像や事件の中身がいかにも薄味だったのだ。

 放送開始から7年。あらためてキントリの役割を振り返ると、相手は一筋縄ではいかない犯人だ。簡単に自白しない。言うことも嘘を含めて二転三転する。つまり「取り調べ不能な容疑者」こそ、もう一人の主役なのだ。

 再開後は、そんな原点を踏まえた物語を見たい。

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