鎌田靖さん 一人登山で百名山すべてに登りたい…NHK神戸放送局転勤を機に“山男”に

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鎌田靖さん(ジャーナリスト/64歳)

 NHKの記者として活動し、「週刊こどもニュース」のお父さん役や報道、ドキュメント番組のキャスターも務め、退局後はフリージャーナリストとして「ひるおび!」(TBS系)などでおなじみの鎌田靖さん。30代から山登りが好きになり、死ぬまでにやりたいことは日本百名山をすべて制覇すること。山登りの魅力を語っていただいた。

  ◇  ◇  ◇

 もともと好きだったわけではないんです。1993年に神戸放送局に転勤になった際に「みんなが登る六甲山に登ってみようかな」と思い、登山したのが山登りに魅了されるきっかけ。それからは毎週のように六甲山を中心に登るようになりました。

 大震災の後、六甲山に登って、途中にある有名な風吹岩から眺めた被災した神戸の街並みは忘れられません。

 好きになったのは兵庫県出身の加藤文太郎(1905~36年)という戦前の登山のスターを知ってからです。作家の新田次郎が「孤高の人」という小説で紹介してます。加藤は一人で登山するんですよ。僕はそれまで家族と登ったりしましたけど、加藤文太郎に影響されて、一人で登るようになりました。

 山登りはケガや危険があった時のために、単独行動は推奨されないんです。でも、僕は気が小さいからか、登山の途中で相手のことを気遣いすぎてしまう。それと、記者として取材するため、人と接する日常がすごいストレスで(笑い)。休日の登山まで人に気遣いたくなかったから。「一人になりたい」という気持ちなのも、登山にのめり込んだ理由でした。山で一人なのは心地いい。

 その後大阪に転勤になったこともあり、関西全体に広がりました。関西の山は、宗教性の強い山が多いですよね。宗教家が鍛錬のために登る山です。その中心で、百名山のひとつの大峰山(奈良県)にも登りました。山頂に神社と泊まれる場所もありました。

 山登り中に下山する人とすれ違うと「こんにちは」と挨拶するのが普通ですけど、大峰山では「ようお参り」と“よくお参りしてくれました”と言うんですね。関西の山の奥深さを感じましたね。

 僕は野球が好きだったし、体を動かすのも好きだったので、中高年になってもガイドブックに書いてある標準走行タイムを上回って登山するのが密かな楽しみ。本当はタイムを競っちゃいけないのですけどね。

■検察幹部、友人と3人で登った時は仕事の話ができた

 たまに友だちと登ることもありました。一時期他社の記者と検察の幹部の3人で関西の山を登ってました。このメンバーだと仕事の話ができました。

「今度、捜査当局はどういう事件をやるのか」とか「捜査のポイントはどこですか」と登りながら取材ができる。仕事に役立てるつもりはなかったんですけど、聞かないのも変ですし、これはプラスになりました(笑い)。そのうち幹部の方が「聞きたいことは先に聞け」と言ってきて。「話した後は山登りを楽しもう」と。

 東京に転勤してからは百名山の尾瀬国立公園の至仏山(群馬県)や東京都の最高峰の雲取山などに登りました。

一番登りたかったのは父親も登っていた槍ケ岳

 一番登りたかった山が槍ケ岳(長野県・岐阜県)。2008年に一人で登り、一番印象に残ってます。登り甲斐のある山でしたが、ヘロヘロになることはなく、3000メートル超の頂上まで行けました。

 なぜ一番登りたかったかというと、早くに亡くなった父親が生前に槍ケ岳に登っていたと、アルバムに残っていた写真で知っていたから。共通の経験ができたことが僕には大きかった。

 もうひとつ、先の登山家、加藤文太郎が槍ケ岳を目指して遭難し、30歳で亡くなったのは有名な話ですから。一番難しい北鎌尾根ルートで遭難。ロープが必要な箇所があり、当時、極めて困難なルートでした。山頂から北鎌尾根を見下ろした時、「ここか!」と印象に残りましたね。私はそんな危険なルートは通りません(笑い)。「歩けるわけねえじゃん」と。

 残念ながら百名山で撮った写真は何人かで鳳凰山(山梨県)を登った時しかない。一人登山ばかりで写真がないんですよ。

 死ぬまでに百名山すべて登りたい。「日本百名山」(深田久弥著)を読んで百名山を登りたい方は多いでしょうね。

 私は偉そうに言ってますが、同じ山を何度も登ってることもあって、数えたら今までに20座しか登ってなくて。60歳を過ぎてるので今から80の山を登るのは無理かもしれません。実はコロナ禍もあって1~2年、山登りはできていない。でも、今回のインタビューをきっかけに奮起して、百名山にトライします。新品のトレッキングシューズも買いましたし(笑い)。もうやらざるをえない。

 今まで行った山についての記録がA4のファイルにまとめてあります。もし死ぬまでに百まで登れなくても「俺が死んだらこのファイルだけは棺に入れてくれ」と家族には伝えてあります。

(聞き手=松野大介)

∇鎌田靖(かまだ・やすし) 1957年5月、福岡県出身。81年に記者としてNHKに入局。「NHKスペシャル」「追跡!AtoZ」のキャスターなど出演多数。2017年に退局後、ワイドショーや報道番組でニュース解説などを務める。

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