著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

アメリカに制裁まで科されたのに…日本帝国はほんとにバカな戦争をしたもんだ

公開日: 更新日:

 8月はいつも戦争のことを考えてしまう。戦争を体験したわけでもないのに。「空襲」や「玉砕」や「特攻」なんて知りたくもない覚えたくもない言葉が、あまたの戦争映画を見てきたせいで脳の中にこびりついているからだな。これも疑似体験からくる心的外傷後ストレス障害(PTSD)の一種かもしれないが。でも、戦争を考えることは病気ではないし、これからも思っていくことだろう。戦争というのは、バカ者のやることだ。これは確かだな。世の中でも世界中でもいいが、バカ者はたくさんいる。バカ者だらけだ。だから、バカ者を監視していなければならない。政治家や役人たちはロクに監視できていない。“国益”“抑止力”がどうのこうのとお経のように言うだけだ。抑止力を増やしたところで戦争はバカ者がいる限り起きる。独裁者プーチンなんか核の抑止力を脅しに使って、戦争してやがる。誰も止められない。経済制裁も役に立っていないようだ。

 アメリカに石油の全面禁輸の制裁まで科されたのに、それでも世界戦争を始めたのが大日本帝国だった。国力が何十倍も違うことは軍人も役人も皆、知っていたのに、ナチスドイツと軍事同盟まで結んで、戦争を始めた。バカとしか言いようがない。連合艦隊司令長官になった山本五十六も「アメリカと戦争では国が滅びる。内乱を避けるために戦争するのは本末転倒だ」などと言っていながら真珠湾に攻撃をかけた。帝国軍人は帝国に忠誠を誓っているから逆らわなかったということか。もしも逆らっていたら、長官を首になるか、あるいは殺されて、次の長官が攻撃をしかけただけだろう。政府の大臣も「戦争は避けましょ」といえば、殺されたんだろう。過去の山本五十六の映画を何本かDVDで見直してみたが、戦争に反対する閣僚は出てこないし、ただ悲愴なだけだった。先の近衛首相も無能な政治家だろうが、対英米戦を決めた東条英機内閣というのは全員がにっちもさっちもいかず、戦争妄執ノイローゼだったとしか思えないような、そんな映画ばかりだ。用済みのDVDと一緒に、燃えるゴミに処分したが。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    朝ドラ「あんぱん」豪ちゃん“復活説”の根拠 視聴者の熱烈コールと過去の人気キャラ甦り実例

  3. 3

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  4. 4

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  5. 5

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  1. 6

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  2. 7

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  3. 8

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  2. 2

    大谷 28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」とは?

  3. 3

    学力偏差値とは別? 東京理科大が「MARCH」ではなく「早慶上智」グループに括られるワケ

  4. 4

    ドジャース大谷の投手復帰またまた先送り…ローテ右腕がIL入り、いよいよ打線から外せなくなった

  5. 5

    よく聞かれる「中学野球は硬式と軟式のどちらがいい?」に僕の見解は…

  1. 6

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  2. 7

    進次郎農相の「500%」発言で抗議殺到、ついに声明文…“元凶”にされたコメ卸「木徳神糧」の困惑

  3. 8

    長嶋茂雄さんが立大時代の一茂氏にブチ切れた珍エピソード「なんだこれは。学生の分際で」

  4. 9

    (3)アニマル長嶋のホームスチール事件が広岡達朗「バッドぶん投げ&職務放棄」を引き起こした

  5. 10

    米スーパータワマンの構造的欠陥で新たな訴訟…開発グループ株20%を持つ三井物産が受ける余波