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桧山珠美コラムニスト

大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」に「今月のダラクシー賞」を長期連載中。

TULIP財津和夫のラストツアー密着番組 「燃え尽きたあしたのジョーにはなりたくない」の重み

公開日: 更新日:

 19日、「僕の“最後の歌”を届けたい~財津和夫 TULIPラストツアー~」(NHK)を見て涙が止まらなかった。

 現在74歳の財津和夫がリーダーのTULIPは今年50周年、全国ツアーの真っ最中。番組はこのツアーを、TULIP最後のツアーにしようと決意した財津に密着するものだった。

「もうここから先の谷を渡る橋はない。今まで渡れる橋は渡ってきたけれど、目の前の橋はないんだぞっていうのは、強く思います」と語る白髪の財津。「なんかもうさ、これ最後じゃね、って思うわけ。終わった後、どうなってるかわからないけど、もう無理だろうなって。集大成と言うには大袈裟だけど、今までやってきたことをやりきりたいなあっていうのはあるよね」とメンバーに“これが最後”と伝え、いざ、ツアーへ。

 その1週間前、「もう最高、楽しいってなるようにやっていきますけど、命懸けではやりません。命懸けって命がなくなるんですよ……あしたのジョーの燃え尽きた最期にはなりたくないですね」と語った。「生命感はちょっと残しておきたいですね」とも。

 50代後半は更年期障害に苦しみ、70歳を目前に大腸がんを経験。死に直面した財津の言葉は重いのだ。がんを克服しても「全然違います。ピークを100とすれば今は40、30くらい」というもどかしさもあるのだろう。

 番組には財津と同い年の小田和正もコメント出演した。財津のデビュー曲「魔法の黄色い靴」に衝撃を受けたエピソードや何を作っても小田っぽいと言われる自分とは違い、財津は変幻自在だなどと語っていた。

 観客の姿を何回も映したが、財津と一緒に年を重ねてきた人たちというのがマスク越しにもわかる。

 終盤、客席で涙するファンを目にし、感極まり涙する財津。その姿にこちらももらい泣き。

 ステージで演奏された曲がハイライトで流れたが、自分でもびっくりしたのは全部歌えること。そういえばLPレコードを持ってたなあと。当時の記憶が蘇ってきた。

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