宇梶剛士が語る俳優の矜持「還暦になって、なんとも言えない多幸感があります」
俳優の宇梶剛士(60)が自身の作・演出した、劇場版「永遠ノ矢=トワノアイ」を22日から11月4日まで下北沢トリウッドで公開する。同作はコロナ禍で上演会場が減ってしまったのを機に映像化。ライフワークにかける演出家・俳優の矜持を語った。
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北海道を含め上演予定の会場がコロナ禍で縮小、今年スクリーン上映が実現。3月に釧路で上映すると評判は広がり、上映館は北海道内10館に拡大。現在、東京で公開中だ。
「見てもらうために作ったのに見てもらえない悔しさから、上映を思い立ちました」
――物語は宇梶自身のルーツでもある、アイヌを描いています。
「この作品で31作目になるのですが、4作目でアイヌを描いた時の反省から時を経て、ようやくもう一度描いてみようと挑みました。アイヌ民族の血をひく主人公が“父親の墓問題”で親族から責められたことをきっかけに、自分の存在意義を見直し始めます」
――自身は主人公の叔父・トワジイ役です。
「日常の人間関係から森羅万象に至るまで『〇〇とは?』と人に問い返す面倒なじいさんです。モデルはアイヌのリーダーでもある僕の叔父。まだ役者だけでは食えない頃、叔父の土木会社で働きながらアイヌのさまざまなことを教え込まれました。叔父は生き方というか存在自体がアイヌそのもの。いつもアイヌの法被を着ているんです。叔父を知る人は舞台を見てすぐにわかると言っていました」
――母も男女平等・アイヌ民族の活動家です。
「母は活動に身投げしたに近い状況で、家にいる時間が短かったから一緒にいると疲れちゃうこともあるけど(笑)、人生の先輩だと思うと彼女から学ぶことが多い。無意識に影響を受けていますね」