30代、クリスマスは“ただの平日”になった。気楽だけど…胸の奥がキュッとするのは何故?

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コクハク

クリスマスが一大イベントだったあの頃

 クリスマスは恋人と過ごすべき特別な一日だった20代、そんな焦りは消えて「ただの平日」になったアラフォーの今。 気楽に過ごせていいけど、なんだか寂しい気持ちにもなる。大人になって変化した「12月24日」の意味を考えます。

 友人の恵(37)は、12月に入ると決まってこう言う。

「クリスマスって、いつからこんなに普通の日になったんだろうね」

 20代の頃の恵にとって、クリスマスは一大イベントだった。恋人がいるかいないかで、その年の自己評価が決まるような日。

 予定がなければ「私、何か間違ってる?」と本気で落ち込み、必死に合コンに顔を出し、誰かと約束を取りつけていた。

 街のイルミネーションは希望の光だったし、クリスマスソングは「私にも何かが起きるかもしれない」という予感をくれた。

 あの頃のクリスマスは、“恋愛している自分”を証明する舞台だったのだ。

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寒いし、平日だし、翌日も仕事

 でも、アラサー・アラフォーになった今はどうだろう。

 12月24日。恵は普通に仕事をして、残業をして、帰りにスーパーで半額になりかけたチキンを横目に見て、結局買わずに帰る。

「ケーキ? 一人で食べたら重いし…」

 そんな現実的な理由が、自然と口から出てくる。寒いし、平日だし、翌日も仕事。昔みたいにヒールで歩き回る体力もない。

 何より、「誰かと過ごさなきゃ」という焦りが、いつの間にか消えている。クリスマスが嫌いになったわけじゃない。ただ、“特別扱いしなくなった”だけだ。

戻りたいわけじゃないけれど

 それでも、会社帰りにふと見えたイルミネーションや、ラジオから流れてきた昔のクリスマスソングに、胸の奥がきゅっとする瞬間があるという。

「別に戻りたいわけじゃないんだけどね」

 そう言いながら、恵は少しだけ寂しそうに笑った。

 きっと、あの頃を恋しく思うのは、クリスマスそのものじゃなくて、“何者かになれる気がしていた自分”なのだと思う。

 若い頃は、恋愛も仕事も、全部これからだった。クリスマスは、その未来への期待を象徴する日だった。

 誰かに選ばれたら、誰かに愛されたら、人生がうまくいく気がしていた。

 でも今は違う。仕事の現実も、人間関係の難しさも、人生がそんなに単純じゃないことも知ってしまった。

 だからこそ、クリスマスを過度に盛り上げることができなくなったのかもしれない。

手に入れた強さ

「昔の私なら、今の私を見てガッカリするかな」

 恵はそんなことも言っていた。でも、私は思う。たぶん、今の恵のほうがずっと強い。

 恋愛イベントに振り回されなくなって、“誰かといない自分”を否定しなくなって、静かな夜を自分で選べるようになった。

 それは、諦めじゃなくて成熟だ。クリスマスがただの平日になったのは、夢を失ったからじゃない。

 現実をちゃんと生きるようになったからだ。それでも、胸がきゅっとする瞬間があるのは、あの頃の自分を、まだどこかで大切にしている証拠。

静かに自分の人生を振り返る夜

 イルミネーションを見て、「ああ、今年も終わるな」と思う。それだけで、十分じゃないか。特別じゃなくなったクリスマスも、悪くない。

 大人になった私たちは、もう無理に浮かれなくていい。でも、少しだけ懐かしんでもいい。

 クリスマスが“ただの平日”になった今だからこそ、静かに自分の人生を振り返る夜にしてもいいのだと思う。

自分だけのクリスマスを

 それは、誰かに見せるための夜じゃなく、誰かと比べるための夜でもない。ただ一年分の自分をねぎらい、「よくやった」と心の中で言ってあげるための夜だ。

 そんな過ごし方を選べるようになったこと自体が、私たちがちゃんと大人になった証なのかもしれない。

 そして、もし少しだけ余裕があれば、温かい飲み物を用意して、昔好きだった曲を一曲だけ流してみてもいい。

 浮かれなくても、特別じゃなくても、それでもちゃんと“自分のクリスマス”は、ここにある。

(おがわん/ライター)

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