著者のコラム一覧
立岩陽一郎ジャーナリスト

NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」はじめ、「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」「トランプ王国の素顔」「ファクトチェックとは何か」(共著)「NHK 日本的メディアの内幕」など著書多数。毎日放送「よんチャンTV」に出演中。

テレ朝・玉川徹氏の“電通発言”は放送メディア研究の対象として極めて興味深い

公開日: 更新日:

 最後の「電通」の部分を除けば、国葬が強い政治的意図を、その意図を隠した形で演出されるという演出家としての認識を語ったものと読める。その認識に同感する人は多いだろうし、反発する人も冷静に受け止められる内容かと思う。

 ただ、放送メディアには、活字メディアとは異なる性質がある。それは発言者の声音だったり表情だったりといった放送の持つ特質だ。要は、「話し方」だ。特にテレビはそれによって極めて強い印象操作が可能となる。

 仮に玉川氏が穏やかな「話し方」でテレビディレクターとしての視点から国葬への認識を語っていたら、その後の状況は変わっていたようにも思う。それでも反発する人はいるだろうが、少なくとも内容は正確に伝わった気もする。加えて言えば、仮に「話し方」が穏やかであれば、「電通が入っています」といった、確認さえしていない内容を断定的に語る愚を犯すことはなかったようにも思う。

■コメンテーターは誕生当初から「話し方」が重視されていた


 実は、コメンテーターというのは、その誕生の当初から「話し方」が重視されていたという逸話がある。戦後にNHKがニュース解説を始める時のエピソードとして、GHQ=占領軍総司令部でNHKの指導・検閲にあたったフランク馬場氏が書き残したもので、それによると、人選に事実上の決定権を持っていたGHQは、新聞記者やNHKアナウンサーの音声をGHQで働いていたアメリカ人女性に聴いてもらって意見を求めたという。もちろん、彼女たちは日本語を理解しない。では、彼女らは何を判断したのか。それは「話し方」だった。

 玉川氏の人気が勢いのあるその「話し方」にあることも間違いなく、そういう意味では今回の騒動は必然だったのかもしれない。

※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。
 tateiwa@infact.press

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い