「日本異世界百景 幽玄一人旅団」清水大輔(しめ鯖)著

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「日本異世界百景 幽玄一人旅団」清水大輔(しめ鯖)著

 そこからさらに一歩足を踏み出せば、異世界に紛れ込んでしまうのではなかろうか、いやもしかしたらもう既に自分は知らない世界へと迷い込んでしまったのかもしれない──そんな不安さえ抱かせる、「少し怪しげで、不思議で、そして何よりも魅力的な」国内各地のスポットを撮影した写真集。

 そのひとつ「垂水遺跡」(写真①)は、山形の有名な観光地「山寺(立石寺)」の奥、「裏山寺」と呼ばれる場所にある。蜂の巣状に穴が開いた凝灰岩の山肌がうねるように眼前へと迫り、写真を目にするだけで、まるで巨大な生き物の体内に取り込まれたような気分になってくる。

 洞窟の前に据えられた鳥居が、スポットライトのようにやわらかな日の光を浴びて、そこだけが浮かび上がっている。

 風雪にさらされ、まるで乾いた骨のようにも見えるその鳥居は、洞窟の奥に閉じ込められた何者かがこの世に出てこないよう結界を作っているかのようだ。

 佐賀県の「大魚神社の海中鳥居」(写真②)は、浅瀬から沖へと誘うようにいくつもの鳥居が並ぶ。夕日に染まる海原と整然と並ぶそのさまは、まるで黄泉の国の入り口であるかのようだ。偶然か、いつもそうなのか、沖に立つ最後の鳥居には、番人のように鳥がとまっており、その入り口から入ろうとする者を見定めている。

 まずはこうした神や仏が鎮座する神社仏閣をモチーフにした作品が並ぶ。

 著者の手にかかると、京都の伏見稲荷大社や、四国八十八カ所巡りの一番札所「霊山寺」(徳島県)など、有名スポットも、見慣れた風景とは異なる表情を見せる。

 観光地とはいえパワースポットであるがゆえに、そこには観光客には見えない、秘密の扉があるのではと思えてしまう。

 続く章では「レトロモダンの迷宮(ラビリンス)」と題し、「近代的でありながら、どこか異質なたたずまい」の建物を取り上げる。

 都会のど真ん中に立つ「大阪府立中之島図書館」(写真③)や、「名古屋市市政資料館」など、明治や大正時代に建てられた重厚な建物は、普段は利用者でにぎわっているはずだが、人の気配がないと、まるで別の顔を見せる。

 営業中の喫茶店「荻窪邪宗門」(東京都)でさえ、著者のレンズを通すと、読者をダークファンタジーの世界へと引きずり込む。

 以降、熱海の來宮神社の「大楠」や、熊本県天草市の西平椿公園の巨岩にとりついた生き物のようなアコウなどの巨樹、エッシャーのだまし絵の中に紛れ込んでしまったかのような錯覚を覚えてしまう長野市の宿泊施設「ホシナサトマチ」の内部(表紙)など。48スポットを網羅。

 知られざる日本のもうひとつの顔を垣間見ることができる写真集だ。

(ホビージャパン 2200円)

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