「濱地健三郎の奇かる事件簿」有栖川有栖著
「濱地健三郎の奇かる事件簿」有栖川有栖著
心霊探偵・濱地健三郎と助手の志摩ユリエが活躍する心霊探偵シリーズ第4弾。今回は濱地の冷静かつ見事な解決手腕はもちろん、ユリエが心霊現象に対処する能力を少しずつ高めて成長していく様子も描かれている。にわかには信じがたい奇妙な相談でさえ、紳士的かつ知的な探偵と、彼を尊敬しつつ自分も役に立ちたいと望む助手の安定した信頼関係の中では、あり得る事象としていつのまにか読み手の中にもすんなり入ってくる。
冒頭の「黒猫と旅する女」は、江戸川乱歩の有名な小説「押絵と旅する男」からヒントを得て作られたもの。かつて金融関係の会社でシステム管理の仕事をしていたが、今は休養期間をとっているという若い男性が、濱地の事務所にやってくるところから物語は始まる。彼がふと出かけた旅先の電車で出会った女性との話が、乱歩の小説と次々とリンクし始めるのが興味深い。
ほかにも、空き巣に入った2人組を襲った予期せぬ出来事を描いた「ある崩壊」、ホテルの一室に起きた心霊現象の解決を頼まれる「少女たちを送る」など、計7編の短編ミステリー作品が楽しめる。
(KADOKAWA 2200円)



















