竿4本フル稼働でカセ釣り24時間。その釣果が並ぶ【三代目木村屋(大阪・堺筋本町)】
店の入り口に「今週の釣果」が誇らしげに掲示される。取材時は、ブリ1、タイ1、イトヨリ1、大サバ2、ツバス28、アジ25、オウモンハタ2、そして超高級魚のアカヤガラ1。「今週の」といっても定休日の土、日曜日の2日間だけでこれだけ釣り上げながら、店主の原秀男さん(57)は「いやぁ、これじゃ悪い方ですわ」と頭をかいた。
漁は壮絶を極める。目指す先は和歌山南端の串本。大阪から片道200キロ以上、車を5時間ほど走らせて午前4時に出船だ。金曜の夜営業がある晩は一睡もせず、漁に向かう。漁法はカセ釣り。全長6メートル、幅2メートルほどの貸し切りボートに乗り、渡船の船長がポイントまで牽引してアンカーを落とす。
そして夕方4時まで延々12時間も釣る。1日目が終わると、経費を抑えるため車中泊。食事、飲み物もすべて自前で用意し、翌朝4時に2日目が始まって合計24時間をボートの上で過ごす。4本の竿はフル稼働。同時にかかっても電動リールで時間差をつけて巻き上げるから心配ない。
過酷なのは真夏だ。パラソルを開き、扇風機を回して水分を取らないと熱中症でダウンする。祖父が創業した店はうどん屋なのに、原さんはこの生活をもう3年も続けている。
「釣り代、エサ代、交通費、食費などで経費は3万円弱。大型のブリ1本釣れれば30人前取れるからチャラになる。赤字は年間で5週もないよ」

















