著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

「警告」と縁深し 津田沼パルコの閉店と最初で最後となったラジオの公開生放送のこと

公開日: 更新日:

 先週末の夜、ぼくは千葉県習志野市津田沼にいた。JR津田沼駅北口から伸びるペデストリアンデッキには溢れんばかりの人びと。「津田沼パルコ」の壁面を使ったプロジェクションマッピングの見物客である。梨泰院雑踏事故の影響か警備にあたる警察官たちはそろって厳しい表情だ。「はい、立ち止まらないで!」。警告が怒気を帯びていくなかあざやかな映像がパルコの壁面に投影された。津田沼の過去と未来を描いた5分間ほどの映像は、近未来的な意匠に感傷的なトーンがまじる。そう、これは来年2月末に45年間の歴史に幕を下ろすパルコの閉店イベントの一環なのだ。こんな葬送の儀もあるのかと胸が熱くなった。

 津田沼駅で降りたのは今世紀はじめて。千葉のラジオ局bayfmでDJを務めていた1996年頃、一度だけパルコで公開生放送をやって以来だ。番組は午前から夕方まで7時間もの長尺だったから、ぼくは早朝に現地入りした。だが開店は番組スタートから1時間後。それまでは、せわしなく働くパルコの清掃スタッフや各テナントの朝礼を見ながらマイクに向かうという試練が待っていた。目の前に何もなくても、いや何があろうとも、そこが快適空間であるかのように楽しげに話すのがおしゃべりのプロだとすれば、自分が有資格者になるには一億光年かかることを思い知らされた。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋