なぎら健壱さん 25周年コンサートでゲスト出演してくれた3人の恩師の教え

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演説の歌を歌うバイオリン演歌師・桜井敏雄

 もう一人は演歌の桜井敏雄さん。バイオリン演歌とは造語です。

 といっても、演説の歌の意味の演歌師。古い話ですが、明治時代にはアジ演説をやっていると捕まっちゃう。だから捕まらないために、アジ演説の文句を歌にした人がいた。そしたら見ていた人が「演説の歌だから演歌だ」と言った。それが演歌の最初。元々はコブシを回して歌うのが演歌ではなかったんですよ。

 反戦歌を歌うボブ・ディランら僕の好きなアメリカのフォークと「明治政府を倒せ」とか民衆の気持ちを歌う昔の演歌師は精神が同じだと思っていて、僕はそれが好きでレコードを見つけてました。

 ただ、かつての演歌師を探したけど、「現存してる方はいないよなあ」と諦めた80年代にいると知り、出会うことが出来たんです。

 それが桜井敏雄さん。「のんきな父さん」「酋長の娘」を作られた石田一松(02─56年/演歌師、作詞・作曲家)のお弟子さんなんです。

 家が近かったから、当時桜井さんが歌ってらしたプロテストソング的な演歌を徹底的に教えていただき、吸収していきました。明治、大正、昭和と気骨のある歌が多く、先生は歌いつないできた方。歌詞には満員電車とか、犬小屋みたいな狭い家に住んでるとか現代の庶民と同じ苦しみを歌う歌もあります。

 演歌師は外で歌を一番だけ歌って、歌詞が書いてある本を売ってお金にする。露店商みたいだったんです。やがてレコードの時代になると本が売れず食えなくなり、飲み屋に歌いに行く「流し」になり、演説の歌から流行歌や艶っぽい歌も歌うようになった。それが今の演歌。

 桜井さんに歌っていただいたことがありますけど、ご高齢なのにライブハウスではマイクを使いませんでした。それほどの声量。先生の弟子には「憧れのハワイ航路」の岡晴夫さんがいます。言ってみれば私と岡晴夫は兄弟弟子(笑)。

 3人の師匠が集まったのは私の25周年コンサートの1回だけ。この一枚のスナップしかない。みんな亡くなってしまいましたから。

 あの日から25年。3人から教えてもらったことは私にずっと生きてます。

(聞き手=松野大介)

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