「どちらも捨てられない」恋に溺れた男の苦渋の選択。恋人は“脳検査”まで…56歳が土下座に追い込まれた理由

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コクハク

【不倫ドキュメント・ファイル~なぜ禁断の恋をするのか?】

 世の中、不倫の話題で持ちきりだ。2024年に実施された調査によると、既婚男性の約2人に1人、既婚女性の約3人に1人が婚外恋愛経験者だという。SNSやマッチングアプリが普及し、不倫のハードルは下がる一方。しかし、その裏にある人間の欲望と自己演出には注意が必要だ。

 ワイドショーの定番、それは芸能人の不倫騒動。謝罪会見に活動休止──愛に溺れた代償はあまりにも重い。

 世間が「不倫=絶対悪」と決めつけるなかで、それでも、人はなぜその扉を開けてしまうのか。禁じられた恋に身を投じる不倫の背景をCA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持ち、数々の人間模様を見てきた筆者が読み解いていきたい。

【関連記事】「これが最後の恋だって」56歳男、運命の女から“無理な願い”に動揺。決断までの残り時間はあとわずか…

「無理な願い」を迫られた男のその後

 皆さんは、「『奥さん公認にしてほしい』と愛人に迫られた男の話」を覚えているだろうか。この連載を読んでくださっている方なら、記憶に残っているかもしれない。

 かつてこのコラムで取り上げたその騒動に、進展があった。

 あのとき、彼女が突きつけた期限は「2025年12月末」だった。

 もし、それまでに奥さまへ打ち明けられないのなら、「もう二度と2人きりでは会わない」――それは、ほとんど最後通告に近い言葉だった。

 連絡をくれたのは、関西在住の和樹さん(56歳・美容機器メーカー代表/妻子あり)。相手は取引先の担当者である美恵子さん(45歳・広告代理店勤務/バツ2・シングルマザー)。

 ふたりの関係は、すでに3年に及んでいる。

人生初の土下座――そして知った真実とは

 和也さんは語る。

「美恵子とは、公私ともにとても相性がいいんです。共通の知人も多く、一緒にいると心から落ち着けるし、パワーももらえる。でも、『不倫であることを誰にも言えないのがつらい』『せめて、私の存在を、奥さんに認めてもらえないか』と言いだして…。正直、動揺しました」

 男としては、美恵子さんを選びたい――。その想いに、偽りはないという。

「彼女のおかげで、どれほど“オス”としての自信を取り戻せたか分かりません。感謝してもしきれない存在です。

 でも、父親であり、夫であり、経営者でもある僕にとって、家族を捨てるという選択はどうしてもできなかった。結局、美恵子に土下座して『どちらも捨てられない』と伝えました。人生で初めての土下座でした」

 そのとき、美恵子さんは声を殺して泣いていたという。さらに、そこで初めて知った事実があった。彼女は脳神経外科を受診していたのだ。

 右側頭部の痛みと38度の発熱が2週間以上も続き、コロナやインフルエンザは陰性。血液検査と脳の検査の結果は、「強いストレスによる影響」だった。

 自分の存在が、美恵子の心と体を追い詰めていた――そう悟った和樹さんは、ある決断をする。

関西と沖縄の二拠点生活へ

「美恵子への揺るぎない愛の証として、沖縄にセカンドハウスを購入しようと思ったんです。沖縄は、2人の共通の趣味であるスキューバダイビングを楽しむために、何度も訪れた場所ですし、本島なら、彼女が会社を辞めたあとも新しいビジネスを始められる。

 僕も関西と沖縄の二拠点生活ができます。出張が多いので、家族に怪しまれにくいという現実的な面もありますが…」

 そして、和樹さんの行動はそれまでとは一変したという。

「正直、僕はまめなタイプではありませんでした。仕事に没頭すると、連絡すら忘れてしまう。でも今は、必ず1日に3回はLINEを入れているし、FBにも居場所が分かるよう投稿しています。

 車移動ならパーキングエリア、新幹線や飛行機なら駅や空港の写真をアップすると、彼女から、『気をつけて』『お仕事頑張って』と返事が来る。それが、今の僕の支えなんです」

許されないと分っていても

 沖縄のセカンドハウス計画と、日々のこまめな連絡。それによって、2人の関係はいったん落ち着いたように見える。

「『もう通院しなくて大丈夫と言われた』と聞いたときは、本当にホッとしました。どんなに明るく振る舞っていても、彼女はとても繊細なんです。僕は相当な心労をかけてしまった。本当に反省しています。

 許されない関係だというのは、分かっています。でも、僕にとって彼女は『体の一部』のような存在。失えば生きていけないと思うほど、魂レベルで愛しています。家族には心の中で詫び続けながら、それでも彼女との逢瀬を重ねています」

問題はただ静かに奥へ

 愛人のために、セカンドハウスの購入まで決意した56歳の和樹さん。男としての責任。夫として、父としての責任――その天秤は、限りなく等しいままだ。

 そして、美恵子さんが口にしていた「年内に決着を」という言葉は、今のところ影を潜めているという。

 だが、それは「解決」を意味するものではない。問題が消えたのではない。

 ただ静かに、深く、奥へと沈んでいっただけなのかもしれない。

(蒼井凜花/作家・コラムニスト)

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