岸井ゆきのが聴覚障害のボクサー熱演 映画「ケイコ 目を澄ませて」が描く時代性とメッセージ性

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 小規模公開からSNSなど口コミで話題になった映画「ケイコ 目を澄ませて」が粘り強い興行を続けている。間もなく公開1カ月となるが、都内の劇場では足を運ぶ人が絶えず、今月からは全国でも公開館が広がる。聴覚障害のある元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案に、「きみの鳥はうたえる」(2018年)の三宅唱監督がオリジナルストーリーとして映画化した異色のボクシング物。映画批評家の前田有一氏が見どころを語る。

 ◇  ◇  ◇

「ボクシング映画ながら派手な試合シーンに頼らず、役者の演技で丁寧に見せていくドラマです。とくに主演の岸井ゆきのは3カ月間のトレーニングと糖質制限でボクサーの体と動きをつくるとともに、耳が聞こえない役柄として手話や独特の所作を身に付けるなど、その演技が高く評価されています。一般に日本映画は製作期間に余裕がなく、役者も多忙な人が多いので役作りするヒマがないケースがほとんどですが、彼女は昨年だけで他に4本もの出演作がある売れっ子なのにここまでやった。称賛してよいと思います」

 生まれつき両耳が聞こえないケイコ(岸井ゆきの)は、危険を顧みず試合を重ねる中、ボクサーとしての限界も感じていた。障害を抱えながらハイリスクなスポーツを続けることが皆の迷惑になるのではと身を引くことも考えていたが、そんなとき恩人の会長(三浦友和)から「ジムを閉鎖する」と聞かされる。

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