著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

寡黙を日本の伝統として褒めそやすのは、もう止めにしませんか。

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 ぼくはSMAPNEWSジャニーズWESTといった同社のグループに曲提供したことがあるが、ジュリーさんに会ったのは一度きりだ。20年ほど前、NEWSデビューに際してのミーティングだったと記憶している。そのかぎりにおいて忌憚なく言うなら、上品で聡明な同世代の業界人という印象。巷で喧伝される悪いイメージからはほど遠い。

 ドラマ『3年B組金八先生』等に出演していた元俳優とはいえ、現社長の彼女が顔を出して謝罪したのにはたいへん驚いた。同社トップだった叔父のジャニーさんも母親のメリーさんも、表に顔を出さない裏方という姿勢を終生にわたり貫いたからだ。遅くはあったが、老舗の社是を変えて顔出しに臨んだ決断は、現トップが事態を深刻に捉えていることを証明するには十分だった。ジャニーズファン有志が性加害の検証を求める1万6000筆の署名を事務所に提出したことが、決定的に彼女の背中を押したのではと個人的には思っている。アイドルビジネスを主業務とする芸能事務所にとって、ファンダムの崩壊は最大の悪夢だから。

 動画と文書の要点は、4つの「しません」。①記者会見しません②事実認定しません③第三者委員会設置しません④引責辞任しません。さすがにこれで納得できるファンなんていないよとぼくも微苦笑を禁じ得なかったのだが、ネットを見ると実際には沢山いるんですねぇ。それどころか「ジュリーちゃんよく頑張った」という同情の声まで散見されるのだった。困った親や上司を持つ人が彼女に親近感を抱くのは頷けるとしても、これ、毒親論じゃなくて企業ガバナンスの話なんだけど。そんな心理を誘発するための謝罪動画だとしたら、まさに狙い通りで罪深いですよ、ジュリー社長。

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