著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

「スマイルカンパニー契約解除の全真相」弁護士を通じて山下達郎・竹内まりや夫妻の“賛成事実”を確認

公開日: 更新日:

批判ではなく提言

  ☆ ☆ ☆

 蒙を啓かれたのは今年3月。喜多川氏の性加害疑惑の実態を暴く英BBCのドキュメンタリーを観たぼくは、したたかに打ちのめされた。これまで自分は一体どこに立って何を見てきたのだろう。いや、何を見逃してきたのだろう。はげしい悔恨の念に襲われた。だが、過ちては改むるに憚ることなかれ。まずは注視、そして気になるところがあれば声をあげればいい。変えていけばいい。そう自分に言い聞かせた。

 ジャニーズ性加害問題に向きあうとき、自分につよく律しているのは、被害者の古傷をえぐり出すような物言いは絶対にしないこと。それよりは建設的な提言をしたい。なぜならぼくの主目的のひとつはタレントを守ることであり、特定の誰かを攻撃あるいは断罪することではないからだ。

 SCで過ごした15年のなかで、Jが魅力的な才能の宝庫であることを痛感してたし、個人的に連絡をとるタレントもいる。彼らの活動をサポートしたいという強い気持ちがある。だからこそ、つとめて理性的で品格を失わない話し方を心がけてきた。

 BBCの番組放映後、元J所属タレントの性被害告発が度重なり、それを受けて藤島ジュリー景子社長が動画と文書で公式見解を発表した。5月14日夜のことだ。たまたま翌15日の朝に福岡RKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』に生出演を予定していたぼくは、スタッフの求めに応じて番組内で見解を述べた。社長は記者会見を開きましょう、第三者委員会を設置しましょう等々。今もネットでその書き起こし記事を読むことができるが、突飛なことは何ひとつ言っていない。終盤のくだりを原文のまま引用する。

「今回の疑惑を放置することは、ジャニーズ事務所だけの問題じゃないと思っています。一番の弊害は、今回の報道やマスコミの有り様を見た子供たちが、もし性犯罪・性暴力の被害者になったとき『声を上げても無駄だ』という諦めの気持ちになるかもしれないことです。疑惑を放置することで、社会全体が諦めの気持ちを子供たちに植え付けかねないのではと怖れを感じています。メディア、広告業界、芸能界だけでなく、みんながこの問題を直視しない限り、性加害や性暴力は、この先もなくならないでしょう。音楽業界に身を置く私も正直つらいです。ましてや、こういう世界に憧れたことがある、あるいは憧れている家族がいる、といった人たちも胸を痛めているはずです。私たち一人一人が、この国が抱える問題として当事者意識を持ち、みんなで膿を出すというところに、舵を切るべきじゃないでしょうか」

 読めば瞭然、これは批判ではなく提言だった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  3. 3

    上野樹里“ガン無視動画”にネット騒然! 夫・和田唱との笑顔ツーショットの裏のリアルな夫婦仲

  4. 4

    巨人・阿部監督に心境の変化「岡本和真とまた来季」…主砲のメジャー挑戦可否がチーム内外で注目集める

  5. 5

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  1. 6

    松本潤&井上真央の"ワイプ共演"が話題…結婚説と破局説が20年燻り続けた背景と後輩カップルたち

  2. 7

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」

  3. 8

    参政党トンデモ言説「行き過ぎた男女共同参画」はやはり非科学的 専業主婦は「むしろ少子化を加速させる」と識者バッサリ

  4. 9

    松本潤「19番目のカルテ」の評価で浮き彫りに…「嵐」解散後のビミョーすぎる立ち位置

  5. 10

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ