『連獅子』で長三郎が登場したときの拍手の大きさは「歌舞伎座が揺れた」と感じたほど

公開日: 更新日:

 2月は4都市・5劇場で歌舞伎公演。まず名古屋・御園座では13代目市川團十郎襲名披露公演。尾上菊之助が『勧進帳』で富樫を演じているので行ってみた。

 團十郎の弁慶の出来は、相手役の富樫によって決まると言っていい。菊之助のときが一番、團十郎が燃えることを再確認。同年生まれで名門家の御曹司で少年時代は共演も多かった2人だが、仲がいいのか悪いのか分からない。その緊張感が、富樫が攻め、弁慶が跳ね返し、富樫が弁慶の思いを受け止める筋とシンクロし、鬼気迫る白熱の舞台を生む。完全燃焼した達成感だろう、最後の花道での團十郎の眼は、潤んでいるのか光っていた。

 先代團十郎の弁慶にとっても、最良の富樫は菊五郎だった。富樫は「弁慶の相手役」だから、付きあう形になるが、菊五郎家の「家の芸」と言えるのではないだろうか。菊之助は弁慶にも意欲があるようだが、そのときは、團十郎が富樫を演じるべきだろう。

 大阪松竹座では、1月の歌舞伎座で『京鹿子娘道成寺』を競った中村壱太郎と尾上右近の2人が、『曽根崎心中』のお初・徳兵衛で共演。お初は19歳、徳兵衛は25歳という設定だが、坂田藤十郎が70を超えても演じてきた。それとはまったく別の青年の悲劇として提示された。東京の俳優である右近としては完全なアウェイでの舞台だが、見事に近松門左衛門の世界に生きている。名コンビ誕生だ。東京でもこのコンビで見たい。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    名球会入り条件「200勝投手」は絶滅危機…巨人・田中将大でもプロ19年で四苦八苦

  2. 2

    永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)

  5. 5

    巨人キャベッジが“舐めプ”から一転…阿部監督ブチギレで襟を正した本当の理由

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    巨人・田中将大が好投しても勝てないワケ…“天敵”がズバリ指摘「全然悪くない。ただ…」

  3. 8

    高市早苗氏が必死のイメチェン!「裏金議員隠し」と「ほんわかメーク」で打倒進次郎氏にメラメラ

  4. 9

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  5. 10

    三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束