著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

「私の心の中にある『故郷』は誰にも譲れない」に心を揺さぶられ、「帰郷」の歌詞を急遽朗読した

公開日: 更新日:

 先週木曜(5月30日)の朝、東京地裁へ行った。56歳にして初めての裁判所である。若いころに法曹の道に進むのもいいなあと漠然と憧れたこともあるが、気づけば裁判とはまったく無縁の人生を過ごしてきた。文章を書いたり話したり歌を作ったりして糊口を凌いでいるが、筆禍や舌禍に発展するような仕事内容でもなく、婚姻や相続で裁判の世話になったこともない。いわゆる犯罪や交通事故を起こしたり巻き込まれたりした経験もない。ま、今のところはね。ついぞ裁判所に行くことのないまま一生を終える人って全人口の何パーセントくらいかな。そんなことをぼんやりと考えながら地下鉄霞ケ関駅の長い長い通路を急いだ。

 法廷に足をはこんだのは、ある裁判を傍聴するため。在日コリアン3世の69歳の男性・金正則さんが、SNS上で差別的投稿を繰り返されたとして、高校の同級生に慰謝料などの損害賠償を求めて起こした訴訟の第1回口頭弁論だった。社会問題に関心の強い読者なら、この春ネットで拡散した〈「在日の金くん」ヘイト訴訟〉というニュースをご記憶かもしれない。提訴日(3月29日)の緊急記者会見には、法政大学前総長の田中優子さん、ジャーナリストの有田芳生さん、弁護士の宇都宮健児さんも同席。この錚々たる顔ぶれをみれば、事件の本質が「同級生間のトラブル」なんて生易しい言葉で括れるようなものではないことがすぐに理解できるだろう。「差別はなくならないとも言われますが、私はこれまでの歴史の中で育まれ蓄積されてきた日常的な差別意識を、次の子どもたちの時代にまで継承させることだけは止めたい」と話した金さんが、自分の身に及んだ災いを個人的な問題として終わらせずに、広くマイノリティ当事者への風当たりを変えたいと考えていることは明らかだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジとTBSは「朝8時戦争」“初打席”で空振り三振…テレ朝「羽鳥慎一モーニングショー」独走いよいよ決定的

  2. 2

    NHKドラマ10「魯山人のかまど」は早くも名作の予感! 藤竜也は御年84歳、枯れてなお色香漂う名演技

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    フジ「月9」ドラマ初主演の北村匠海 映画では“共演者連続逮捕”のジンクスに見舞われたが…

  5. 5

    ローム、東芝・三菱電機が統合へ…パワー半導体をめぐる3社連合をデンソーが買収か

  1. 6

    元参院議員・野末陳平さん94歳 大病知らずだったが、2年前に2度の全身麻酔手術を経験

  2. 7

    中島裕翔に新木優子と熱愛報道 ファンから囁かれるHey! Say! JUMP脱退の背景と“問題児”の過去

  3. 8

    新木優子と結婚した中島裕翔は大正解! 吉田羊との“合鍵愛”報道から10年目…

  4. 9

    高市首相が自衛隊派遣めぐり安倍側近と壮絶バトル→「クビ切り宣言」の恐るべき暴走ぶり “粛清連発”も画策か

  5. 10

    「高齢者=賃貸NG」は思い込みだった? 家主が恐れる“4つの不安”を解消する方法