著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

格闘技界と芸能界を自在に行き来するノンフィクションの賞獲り男として、細田昌志の快進撃は当分続くのではないか。

公開日: 更新日:

 今年2月に完結した本紙連載「『テレビと格闘技』2003年大晦日の真実」でおなじみ、細田昌志さん。彼の第30回小学館ノンフィクション大賞受賞作『力道山未亡人』がついに出版された。未発表原稿の公募制で知られる同賞の頂点に輝いただけあって、ズドンとした読みごたえと、300ページ超の長さを感じさせないリーダビリティを併せもつ快作に仕上がっている。2021年には『沢村忠に真空を飛ばせた男/昭和のプロモーター・野口修評伝』(新潮社)で第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を獲った細田さんは、続く今回の受賞で作家としての地位を揺るぎないものにしたのではないか。畏友の快挙を心から祝したい。

 昨年の初夏、四谷を妻と歩いていたら、銀行の玄関から勢いよく出てきた細田さんと思いがけず邂逅した。Tシャツに短パンという軽装の彼は「そいつに乗って国会図書館に行くところなんですよ、最近の日課で」と停めていた自転車を指差した。これも何かの縁だからと3人で近場のカフェに入り、アイスコーヒーを飲みながら彼が連射する言葉に耳を傾けた。話題は「放送作家時代にジャニー喜多川にかけられた言葉」から「ノンフィクションを書いて生きていくこと」、「鳥取の実家の両親」と多岐にわたりながら、その語り口は滑らかな一筆書きのごとし。ぼくと妻はときに爆笑、ときに落涙しそうになるほどで、彼の職歴にはリングアナウンサーもあったと思い至らずにはいられなかった。その日が初対面の妻も「細田さんならどんなインタビュイーも心を開いてしまうんじゃないかしら」と妙に納得していたほどだ。いま思えば、その時期に彼がかかりきりで取り組んでいたのが、締切が迫った『力道山未亡人』だったんだなあ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発