劇団俳優座「PERFECT」“死と生”“命の選別”と真摯に向き合う
法的に中絶が認められるまであと数週間。美花と悠の決断は。そして早苗の母をめぐる人生会議の結論は……。
出生前診断問題は、優生思想と密接な関係にある。「悪質」の遺伝的形質を淘汰し、「優良」なものを保存するという優生思想によって日本でも戦後の優生保護法のもとで断種が続いた過去がある。
一方で近年、「私の体は私のもの」と自分の体に関する決定を自分でするという女性の「自己決定権」論議がある。
むろん、自己決定による中絶は優生思想とは違うという考え方が主流である。だが、人は国家や社会の価値観を内包する。そこから自由になれるのか。
作者は安易な結論に向かわない。
「不妊医療」「出生前診断」「人生会議」に共通するのは生と死に関する問題について、最終的に「個人」に決定を求めることだ。完全無欠な人間がいないのと同じく、人生の「先」は誰にも予想がつかない。
「未来だって何一つ確実なことはない。それならば、今をどうやって正解にしていくかのほうが大事だとわかったんです」との美花の言葉に「軽々に結論を急ぐのではなくそこに至る過程を大事にすべき」という作者の意図が込められていた。 若井はジャーナリストとしての矜持と個人的経験の間で揺れ動く早苗の心情を、天明屋は命の選別に苦しむ美花をそれぞれ真摯に演じ、深い余韻を残した。ほかに高宮千尋、深堀啓太朗。
1時間40分。6月19日まで六本木・俳優座スタジオ。 ★★★★