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てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。最新著「王者の挑戦『少年ジャンプ+』の10年戦記」(集英社)、伝説のテレビ演出家・菅原正豊氏が初めて明かした番組制作の裏側と哲学をまとめた著者構成の「『深夜』の美学」(大和書房)が、それぞれ絶賛発売中!

「後輩に緊張されたら終わり」 巧妙にスキをつくり弱みをさらけ出す笑福亭鶴瓶のお笑い哲学

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 電車が発車し、ファンが見えなくなると、食べかけのまま、そのおにぎりをしまった。さんまが「もう食べないのか」と問うと、鶴瓶は当たり前のように「見てないとこで食べてもしゃあないがな」と笑った(エムカク著「明石家さんまヒストリー1」新潮社=2020年11月17日発売)。

 こうした鶴瓶の“偽善的”ともいえる、いわゆる「悪瓶」の部分を最初に世に広めたのがさんまだった。

 鶴瓶は、そうやって後輩からイジられることをいとわない。極めつきは、まだ30代半ばだったダウンタウンと共演したとき。2人はMCである鶴瓶に「しゃべりが長い!」「ダラダラしすぎ!」などと容赦なくダメ出しをする。「勘弁してくれ、自信なくなるわ、なにもかも!」と言う鶴瓶へさらにダメ出しが続くと、ソファに突っ伏し、座布団を何度も打ちつけながら叫んだ。

「もっとおもろなりたい! もっとおもろなりたい!」(日本テレビ系「いろもん」98年6月6日)

 長いキャリアの中で確立した「鶴瓶」像を背景に、自ら巧妙にスキをつくり、弱みをさらけ出していく。「若手に緊張されたら終わりだと思ってる」(ニッポン放送「笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ」10年10月24日)というのが、鶴瓶のお笑い哲学なのだ。

 冒頭の番組で、さんまに散々“説教”され、イジられ続けた鶴瓶は「でも気持ちええやろ、こいつにもうガー言われたら、初めはちょっと嫌やってんけど、だんだんね、快感になってんねん」と、例の“悪瓶”顔で笑った。

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