最新回の朝ドラ「あんぱん」ウラの見所~脚本家が“1番書きたかったこと”に目からウロコ! すべては聡明なお子様のおかげ…
第22週「愛するカタチ」#109
【朝ドラのツボ!】
ある日、嵩(北村匠海)にファンレターをくれた小学生の佳保が、祖父の砂男(浅野和之)と柳井家にやってくる。笑顔で迎えるのぶ(今田美桜)と嵩だったが、ニコリともせずに辛辣な言葉を投げる佳保に、2人はタジタジに。
佳保が映画の話などで蘭子(河合優実)と意気投合する中、砂男はのぶと嵩に佳保のつらい出来事を話し、嵩の詩集に救われたと感謝を伝える。
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【本日のツボ】
目からウロコ! 脚本家・中園ミホが1番書きたかったこと
※※以下、ネタバレあります※※
ついに登場しました。脚本家・中園ミホの分身である中里佳保が。演じるのは、のぶの子ども時代を演じた永瀬ゆずな。見事に現代っ子になりきっていて、同一人物だと気づかない人もいたようです。
中園先生がやなせたかしとの縁について、何度か語っているのを見て、この日が来ることは予想していましたが、がっつり1話分まるまるやるとは意外でした。
ここまで22週に渡って、毎日、「あんぱん」を見てきたわけですが、中盤当たりから、ストーリーに「?」と感じることもままあり、どうしたものかと思っていました。
なんといっても、あの「おむすび」の後、しかも、やなせたかし夫妻のお話ということで期待が大きかったぶん、徐々にそれがしぼんでいくのは辛くもあり……。最近では次回の「ばけばけ」を待ち遠しく思う今日この頃だったわけです。
嵩の「あんぱんを配るおじさん」はずっとラフスケッチだけで、一向にアンパンマンになる気配もなく……。仕事は順調で、収入もそこそこあるはずなのに、なぜ、オンボロアパート(トイレは外、風呂なし)を出ないのかにいつまでもいるのか。
それらのギモンが本日すべて解決しました。結局、「あんぱん」のなかで中園さんが1番書きたかったのが、このエピソードだったのだな、ということ。
佳穂の登場で一気に動き出しました…
佳保が「家がオンボロ」と言ったことで、嵩は引っ越しを決意し、「やない先生って絵あんまうまくないよね」と言いながらも、「さっき見た太ったあんぱんのおじさんはなんか好きだったよ、カッコ悪いけど」と佳穂がのぶ以外、最初に「アンパンマン」を認め、そして、最後に「やないたかし先生、めげずに描きなよ」と嵩に発破をかけたことで、「アンパンマン」が誕生するという。
ここまで停滞していたことが、佳穂の登場によって一気に動き出す。そんな展開に目からウロコです。
今回のご本人さん登場を見て、その昔橋田壽賀子先生の自伝を朝ドラにした「春よ来い」(1994年~95年)のことを思い出しました。
ドラマが始まる前、橋田先生が自分の役を演じる安田成美に対して、「私にそっくり」と言っていたのを聞いて驚きました。その後、彼女が降板した際に、「飼い犬に手を噛まれた」と言ったのにもびっくりでしたが……。
それはともかく、聡明で利発なお子様、中園先生…いえ佳保のおかげで、私たちは、国民的ヒーロー「アンパンマン」と出会えたのでした。ありがとう。中園先生。
(桧山珠美/TVコラムニスト)