「寿命を縮めない『がん検診』の選び方」大家俊夫氏

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「寿命を縮めない『がん検診』の選び方」大家俊夫著

 日本人が生涯でがんに罹患する確率は男性が63%、女性は51%で全体として2人に1人はがんを経験する。厚労省の推奨するがん検診の受診率は上がってきているが、定期的にがん検診をしていながら、突然、ステージ3や4の進行がんが見つかったというケースも少なくない。

「実はがんの中でも肺がん、乳がん、食道がんの3つはがん検診で早期発見するのが難しいんです。昨年、ソフトバンクの孫正義会長が父親にいきなりステージ4の肺がんが見つかり亡くなったと公表しました。私の知人もある日突然、ステージ4の肺がんを宣告された。なぜ検診を受けているのにこんなことが起こるのでしょうか」

 本書は進行して初めて見つかることの多い肺がん、乳がん、食道がんに焦点をあて、検診で見つからない理由や早期発見のための適切な検査方法、自治体や医療機関の取り組みまでを追った医療ルポだ。

 肺がんの死亡者数は男性では第1位で年間で5万人超、男女合計では7万5000人にも上る。

「自治体や企業などで実施している肺がん検診は胸部X線(レントゲン)検査。ところが肺は肋骨や心臓、横隔膜などに隠れている部分があり、がんは写りづらいのです」

 レントゲン検査では異常がないのに、ある年の検診で突然ステージ4を宣告される理由がこれだ。

「米国では肺がんの死亡率が大幅に減っているのですが、一役買っているのが低線量CT(コンピューター断層撮影)検査。今はレントゲン検査は行われていません。人間の体は3次元構造のため、胸部X線の2次元(平面)画像ではなく、体を輪切りにして3次元(立体)の画像を撮影できるCT検査のほうが、微細な異常や病変を察知できるからです」

 自治体では日立市が2001年、全国で最初に低線量CTを導入。検診費用の9割を市が負担するため自己負担は1000円だという。企業では日立製作所の日立健康管理センタで年平均20例の早期がんを発見し、成果を上げている。にもかかわらず、国内ではCT検査が広まらない。その理由のひとつが費用の問題だ。

 自費の場合CT検査は1万円かかる。

「日本では最新治療のほとんどが米国から導入されますが、低線量CT検査に限ってはその例ではありません。がん検診ではCT検査の説明がないため知らない人も多いでしょうが、これからはぜひ選択肢に考えてほしいですね」

 本書では罹患者たちの切実な声も紹介している。低線量CT検査を知っていればと悔やむ肺がんステージ4の60代男性、たまたま受けたCT検査でステージ1が見つかった女性などその明暗にひやりとする。

 女性のがん罹患率の第1位は乳がんだが、がん検診ではマンモグラフィー検査が推奨されている。

 首都圏在住の62歳の女性は人間ドックで、その年に限ってマンモグラフィー検査ではなくエコー検査を選択したところ、異常が見つかった。

「日本の女性の乳房の特徴にデンスブレスト(乳腺が多い高濃度乳房)というタイプがあります。白い乳腺の中に白い乳がんが写るのでマンモグラフィー検査だけだと見えづらい。エコー検査と1年ごとに交互に受けるか、毎年両方の検査を受けるといいですね」

 他に食道がんは胃カメラで見つかることがあるため、数年に一度受けること勧めている。巻末には低線量CT検査を実施している全国の施設リストなどを挙げている。

「がんの予防は難しい。通常の健康診断に加えて、自分にとってがんが見つかりやすい検査を個別に選んで受けることが寿命を縮めないことにつながります」 (講談社 1650円)

▽大家俊夫(おおか・としお) 立教大学経済学部卒。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)大学院修士課程修了。産経新聞社カイロ支局長、編集員、科学技術振興機構のウェブサイト編集長などを経て独立、医療ジャーナリストに。著書に「私の流儀、ひたむきに生きる女性たち」(共著)など。

【連載】著者インタビュー

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