著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「冒険してもいい頃」(全11巻)みやすのんき作

公開日: 更新日:

「冒険してもいい頃」(全11巻)みやすのんき作

 AV業界を明るいものとして世に認知させたのは駅弁ファックの村西とおるや脇毛女優の黒木香だと思っている人がいるかもしれない。

 違うのだ。本当に世間に認知させたのはこの作品である。

 バブル全盛時代のAV全盛時代にビッグコミックスピリッツ全盛期とみやすのんきの全盛期が重なり、一般の人の多くが目にすることになった奇跡的なスーパーエロ漫画であった。

 中身は全編これ満開の開けチューリップ状態で、一般誌なのに大変な露出度であるのでぜひ一読をおすすめする。青年誌とはいえ大出版社の漫画誌が現在これを連載するとは到底思えない内容である。実際に単行本の表紙には《for ADULT ONLY!!》と小学館が自主規制をしていたくらいである。

 主人公の小金井純平は大学浪人生だったが、その大学受験を諦めて「アポロ企画」というAV会社に就職する。迷いに迷ってのものだった。若葉美和という美人監督にほだされての入社である。

 この小金井、とにかくでかい。長さ20センチの巨根である。しかし巨根でありながらそれを自慢するでもなくむしろ持て余しているもったいない青年だ。入社時はおどおどして内気であったが、この巨根と開き直りで撮影班から男優に転向し、次々にAV女優たちを落として撮影現場で認められていく。

 だがそんな彼にもひとつだけ成せないことがある。憧れの若葉美和監督を口説けないことだ。AV監督をしていながら美和は清純で読者にもなかなか隙を見せない。いわゆる天然の可愛さを持つ元祖でもある。その美和もひょんなことから監督業だけではなくAV女優にも挑戦していく。

 小金井君はじわじわとこの美和にも近づいていく。美和への愛が口先だけでもフェイクでもなく、仕事を通して男を磨いていく結果だという設定にしたところに、みやすのんき先生がこのAV漫画でトップを走っていた矜持がある。

 そのうち美和も小金井君に引かれていき、超高額ギャラの志乃原千恵やJKの三上翔子といった女優たちとライバル心を燃やしながらAVで熱演激闘するようになる。やがて小金井君に惚れた美和は……。われわれ読者は小金井君と一緒に憧れの美和に認められていき、最後は巨根でめでたく結ばれるのだ。

(kindle版ゴマブックス 33円~)

【連載】名作マンガ 白熱講義

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  2. 2

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  3. 3

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 4

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  5. 5

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  1. 6

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  2. 7

    高市首相の台湾有事発言は意図的だった? 元経産官僚が1年以上前に指摘「恐ろしい予言」がSNSで話題

  3. 8

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  4. 9

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  5. 10

    高市政権の「極右化」止まらず…維新が参政党に急接近、さらなる右旋回の“ブースト役”に