キャッスルで結婚式を挙げるはずが…「派閥の親分」の一言で断念、ヒルトンになった
かつて中日には「派閥」があった。俺が「親分」として慕っていたのは沢村賞投手の小松辰雄さんだ。
プロ2年目で二軍暮らしだった俺は、故障で二軍調整中だった小松さんからキャッチボールの相手を頼まれた。
そうそう、俺はプロ1年目、星野仙一監督から海外への武者修行で三塁転向を命じられた。しかし帰国するや星野監督、「おう、やっぱり捕手に戻れ」とひと言。結局、再びマスクをかぶることになった。
小松さんのキャッチボール相手となって以降、オフにはゴルフに誘われたり、自宅に招かれたりするように。年が近い先輩から「おまえはどこ(の派閥)の所属だ?」と聞かれれば、「小松さんのところで……」と答えるようになっていた。
小松さんは面倒見が良い人だった。「一派」は最大勢力。山本昌さん、中村武志さん、今中慎二……小松さんに可愛がってもらった後輩は多かった。
ただ、プライベートなことにも親分の許可がいるのが少々、厄介だった。前回書いた外車許可もそうだが、結婚式を挙げる会場も親分に決定権があった。