(3)補聴器のニーズが高まって周辺技術も進化している
社会で活躍する高齢者が増えるにつれ、補聴器のニーズも年々高まっています。それに伴い、難聴者の社会参加を後押しする補聴器関連技術も注目を集めています。その一例が「オーラキャスト」という通信システムです。
オーラキャストは、音声を無線で複数の受信機(補聴器やイヤホン)へ同時に配信できる技術です。接続方法もシンプルで、対応機器ならモードを切り替えるだけで直接音声を受信できます。
そのため現在では、会議室でのマイク音声、映画館やコンサートホールの音、美術館の音声ガイドなど、さまざまな場面で利用可能です。専用端末を借りる必要はなく、対応機能を搭載したスマホを持っていれば、そのまま音声ガイドを聞けます。また駅の緊急アナウンスなども、雑踏の中でもクリアに耳元で聞くことができるため安心です。広がりを見せている最大の理由は、補聴器を使う難聴者だけでなく、イヤホンを使う若者にも便利で共通に使えるシステムだからといえるでしょう。
さらに、健常者と難聴者の共生を促し、補聴器へのポジティブなイメージづくりに貢献する新技術として、Apple社のワイヤレスイヤホン「AirPods Pro2」の「ヒアリング補助機能」があります。同社によれば、これは軽度から中等度の難聴者向けの機能で、iPhoneやiPadで行ったヒアリングチェック結果をもとに、聞き取りにくい音だけを増幅する仕組みです。補聴器に近い役割を果たすといえるでしょう。