「久生十蘭 ラメール戦記」久生十蘭著
「久生十蘭 ラメール戦記」久生十蘭著
戦時中、海軍報道班員として南方に派遣された作家による戦争小説集。
湖南の戦地で計画されている大作戦に参加するため東京をたったものの、長崎で日本軍は長沙から反転したことを知る。反転したということは作戦が終結したということだ。
それでも上海まで行き、指示を受け漢口に行くと、河北省の随県の状況が悪いという噂が聞こえてきた。地雷を警戒しながら軍用列車でたどりついたその最前線には、随県城を守るための前衛陣地が敵地の中に3つそれぞれ孤立して設けられていた。
敵が後退した日、10人ばかりの兵に護衛されながら我々は、そのひとつへと向かう。(「地の霊」)
ほかにも、上海で再会した親友が語る自分の身代わりに死んだ戦友の思い出など、独自の視点で戦争をとらえた16編を収録。 (河出書房新社 990円)