フワちゃんの「禊」はなぜ長引いた? 復帰騒動に見る“大手事務所とフリー芸人”の格差

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コクハク

フワちゃんが1年4ヶ月ぶりに復帰

 SNS上での暴言により活動休止中だったフワちゃんが芸能界復帰を宣言。活動の場を女子プロレスに移し、再起を誓っている。

 そこで今回は、かつて年間100本以上のライブに出演し、自身もライブ主催者の経験もあるという現役の芸人・帽子田が、「フワちゃん復帰」について解説する。

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 SNSで直球の悪口をぶつけて、世間を大いに騒がせたフワちゃんが1年4ヶ月ぶりに復帰する。女子プロレス団体「スターダム」に所属し、今年の年末には両国国技館大会で再デビューを飾るらしい。ブレイクのきっかけとなったYouTubeも再始動し、本気でゼロから頑張る姿勢を見せている。

 忘れている人はいないと思うが、フワちゃんが謹慎に追い込まれた事件を軽く振り返ってみよう。やす子のほのぼのとしたポストに、フワちゃんが突然「死んでくださーい」と嚙みつき大炎上

 フワちゃんは即座に投稿を削除し謝罪したもののCMや番組も降板となり、無期限の活動休止となった。その休止中も町を歩けば盗撮されたり、追いかけまわされたりと大変そうだった。

世間で分かれる二つの反応

 そんな事件を乗り越えた(?)フワちゃんへの世間の反応は大きく二つに分かれている。

 復帰反対派は「人に『死ね』という言葉を投げかけた人を表舞台で見たくない」「二度と応援できない」と、やはり「死んでください」という言葉のインパクトを忘れていないようだ。確かに文脈のない「死ね」というニュアンスの言葉は、二人が芸人だとしても許されないし笑えないというのは納得だ。

 また、「プロレスを禊の場に使うな」というコメントも多く見られた。確かにやらかした芸能人がプロレスに挑戦して反省を示す、というのはよくある話だ。

 今回も「フワちゃんが芸能界に戻るための足掛かりにされているのでは?」とプロレスファンが疑うのも無理はない話で、やはり厳しい意見が出るのは仕方ないだろう。

芸能界での風当たりは強くはないが

 しかし、フワちゃんの復帰大歓迎派も意外と多い。以前から交流が深い立川志らく師匠は「フワちゃんはフワちゃんらしく生きていけばいい。どんな世界でも光り輝けるはず」と温かい言葉を寄せている。

 プロレス界のレジェンド武藤敬司もX上で「プロレス頑張れよ!」と激励。フワちゃんもそれに「今後は正式に後輩として、背中追いかけさせていただきます!」と答え、芸能界での風当たりは強くはないようだ。

「プロレスを禊にするな」と反感を抱く人もいる一方、フワちゃんの参戦を喜ぶプロレスファンも結構いるのだ。

 実はフワちゃんは既に2022年に番組の企画でプロレスデビューしていて、その際に脳震盪も疑われるくらいの体当たりの試合を見せた。人気絶頂だったフワちゃんは真摯に練習に取り組み、セコンドでも一切ふざけずに全身で挑んだ姿を覚えていたスターダムファンも多い。

 実際に「僕たちはフワちゃんがプロレスに真摯に向き合ってる姿を現場で見てる。そりゃ応援するよ」とのコメントがバズっていた。人が真摯に取り組んだことは自分の身をやがて救うんだなと感心してしまった。

 騒動の時はもう芸能界復帰は絶望的だと思われたフワちゃんだが、芸能界の仲間とプロレスファンからの後押しにより、完全復活するのも近そうだ。

 しかも好都合なことに、ネットフリックスの『極悪女王』のヒットから始まり、上谷沙弥のブレイクなどを通じて、女子プロレス界隈も盛り上がってきている。フワちゃんという飛び道具は、意外にもプロレス界の起爆剤になるのではないだろうか。

フリー芸人のリスクの高さが浮き彫りに

 ようやく完結した「やす子vsフワちゃん」の顛末だが、個人的にはやはり「フリー芸人のリスクの高さ」が気になった。

 現在、芸能界は空前の個人事務所芸人ブームだ。ラランドやさらば青春の光、みなみかわ、ダウ90000など、人気芸人たちがあえて大手事務所に所属せず、自ら事務所を設立したりフリーで活動したりしている。

 その令和っぽさや柔軟性がウケているのだと思うが、この事件を通じて「事務所」の強さが生々しいほど分かった。

「禊」が軽くなりがちな大手事務所

 フワちゃんはSNSでの失言で活動休止となったが、もし大手事務所に所属していたなら、謝罪だけして活動は続行、もしくはもっと短期間の休止だっただろう。

 過去の例をあげると、Aマッソの差別的なネタが問題になった際は、ホームぺージ上で謝罪コメントを掲載したのみで、活動は続行していた。さらに近年でいうと、吉本のオンラインカジノ勢も書類送検までされたが、約5ヶ月程度で復帰している。

 この2つの事件の方が社会的にも大きな問題だが、フワちゃんに比べると、それこそ軽い「禊」で済んでしまっているのだ。

 大手事務所はテレビに出られなければ劇場に出たり営業に行かせたり、事務所が盾になってある程度守ってくれる強みがある。大手事務所に所属しないフリー芸人がいま天下をとりつつあるが、不祥事の際にフワちゃんのように大ダメージを受けることになる。怖い世界である。

芸人界は失敗を面白がる世界

 なにはともあれ、フワちゃんの失言は決して許されるものではないが、芸人界は失敗を面白がる世界。フワちゃんもユーモアを織り交ぜつつ反省で返せば、きっと受け入れてもらえるだろう。

 プロレスの世界でも良さを爆発させて、フワちゃんの返り咲き姿を是非見たいものだ。

(帽子田/芸人、ライター)

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