「不思議な体験をしたら最大 100 万円」不動産コンサルタントが事故物件の"オバケ調査"を始めたワケ
「事故物件」とは、過去に事件や事故が発生した物件で、不動産取引では「心理的瑕疵物件」と呼ばれる。自殺や殺人だけでなく、亡くなった後に時間が経過した孤独死も含まれるが、そんな“敬遠される部屋”の価値を守ろうと、不動産コンサル会社「カチモード」を立ち上げたのが児玉和俊さんだ。近著「事故物件の、オバケ調査員 心理的瑕疵物件で起きた本当の話」(Gakken)では、事故物件に泊まり込み“異常の有無”を確かめる独自調査の体験談をまとめている。
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児玉さんは不動産会社で勤務していた頃、7000室以上の物件を管理してきた。中でも「事故物件」は一度レッテルを貼られると、家賃は一般的に相場より下がり、オーナーさんが頭を悩ます姿を目にしてきたという。仮に毎月2万円下がるだけでも年間24万円、数年住めば100万円以上の損になる。さらに、不動産は収益を前提に評価する「収益還元法」で考えるため、わずかな家賃差でも数百万円単位の資産価値減少につながるのだ。
「オーナーさんが、事故物件だから家賃を下げてもいいと軽く言った一言が、将来的には大きな損失につながる可能性があるんです。少しでも損を減らせる道を探してあげたいと思いました。事故物件でも安心して住めることを証明し、不動産の価値を“戻す”作業が必要だと考えました。それがカチモードの“オバケ調査”なんです」
調査は夜10時から朝6時まで。真夜中に一人で部屋に滞在し、電磁波の測定や室温の変化を確認する。さらに特殊清掃の状況をブラックライトで確かめることも。血液や体液の痕跡が残っていれば光るため、適切に処理されているかどうかを科学的に判断できる。
持ち込む道具は多岐にわたり、その他にも、水平器と共にビー玉も利用し床の傾きを確かめたり、嫌な気配を感じたときは鏡を使い、角度を変えて映してみて違和感の正体を探るのだ。
大学の教授や建築の専門家に協力を依頼することもあり、客観的な視点を取り入れた調査になっている。調査後は「証明書」と「報告書」を作成し、オーナーや不動産仲介に渡す。
「オカルトではなく、科学的に安全性を示す。そうすることで、事故物件でも普通の部屋として運用できる可能性が生まれるんです」
オバケ調査は科学的に行われる一方で、人の気持ちを受け止める仕事でもある。
「オーナーの事情だけでなく、時には遺族の方とも深く関わります。人が亡くなった部屋と言っても、親しい人にとっては“会いたい”と思うこともあるし、まったく縁のない人なら嫌悪感を抱くこともあります。亡くなられた方と新しい入居者との“心の距離”を調整することもまたオバケ調査の大事な仕事。その距離が少しでも縮まれば、部屋への抵抗感もやわらぐと思うのです」
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