『イット・ウォント・ビー・ロング』「黒と白」を超越したハスキーな甘い声の普遍性
『イット・ウォント・ビー・ロング』
あらためてこの曲を聴いて痛感した。「こんなにええ曲やったんか!」と。
まずは歌い出しの歌詞。実に気が利いている。
「♪イット・ウォント・ビー・ロング・イエイ」(そんなの長くねぇ)、「♪ティル・アイ・ビロング・トゥ・ユー」(俺といっしょになるまでは)。
回りくどい表現を小島よしお風に訳してみた。ここで注目は「ビー・ロング」と「ビロング」がかかっていることだ。
音楽的にもアイデアてんこ盛り。コード進行で驚くのは再生時間「0:42」から。無重力の中、体がずん、ずんと沈んでいくような半音下降進行だ(細かい説明は省略するが、そうとう凝っている)。
そして何といっても「1:54」、「♪ロング・イエイ」と歌うべきパートを「♪ロ~ング」と(やや小島よしお風に?)「メロ(ディー)変え」するところがいいではないか。小洒落たエンディング含め、1曲丸ごと、気もアイデアも利きまくった実に名曲だ。
なぜシングルカットされなかったのだろう。その判断は「Long」ではなく「Wrong」だったろう。
■『オール・アイヴ・ゴット・トゥ・ドゥ』
ジョンがスモーキー・ロビンソンの影響から作った曲と言われるが、不思議なのは、ジョンのボーカルを乗せると「黒っぽさ」が消えること。
1981年刊行の『ジョン・レノン』(中央公論社)という本に村上龍が寄せていたエピソード。彼がバイト先のロック好きガードマンから「ジョン・レノンはまっしろだ」と言われたという話が忘れられない。
確かに、あのハスキーかつ甘い声(変な表現だが、そんな感じ)で歌われると、黒とか白とかを超越した「ジョン・レノン・ミュージック」になる。逆にいえば、だからこそ世界を席巻する普遍性を持ち得たのではないだろうか。
歌い出しの歌詞は「君にそばにいてほしいとき、僕のするべきこと(オール・アイ・ガッタ・ドゥ)はただ電話をかけることだけさ」(また回りくどい表現)。
音楽評論家と名乗る連中が「黒っぽい」「白っぽい」など抽象的かつ感覚的なことをあれこれ言うけれども、そういうとき、読者のみなさんがまずするべきことは『オール・アイヴ・ゴット・トゥ・ドゥ』にただ耳を澄ませることだけさ。
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