『ヘルプ!』どんな解釈も許容する奥行きを持った歌詞がとてもいい
アルバム『ヘルプ!』(1965年8月6日発売)⑤
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■『ヘルプ!』②
この曲の聴きどころは、他にもたくさんある。個人的に強く惹かれるのは転調の妙味である。
例えば試聴リンク再生時間「0:10」からの歌い出し、「♪ホエン・アイ・ウォズ・ヤンガー・ソー・マッチ~」からのパートと、同「0:30」からの「♪ヘルプ・ミー・イフ・ユー・キャン~」からのパートは、よく聴けば、まったく別の曲といっていい。
キーも違っていて、前者のキーが「A」、後者が「Bm」。つまりは違うキーに転調している。
↓………ここから続き………
しかし、ジョンの作曲マジックか、前回書いた複雑なコーラスのマジックか……何らかのビートルズマジックが働いて、ひとつの曲として、見事に混ざり、溶け合っている。
次作アルバム『ラバー・ソウル』(1965年)以降の中後期ビートルズでは、ジョンもポールも何かに取りつかれたように、さまざまにキテレツな転調を試していくことになる。そういう意味で、この『ヘルプ!』という曲は(初期ビートルズの総括かつ)中後期ビートルズへの入り口のような曲だともいえるのだ。
そして歌詞。「助けて!」「若い頃は助けなんて要らなかった」「でも今は自信がないから心の扉を開くよ」という大意。かなりテンパっている。事実、解散後のインタビューにおいてジョンは、この曲の歌詞が、自らの心の叫びだったことを明かした。
しかし最後の方で「僕には君が必要」と歌うので、一見ラブソングの仮面をまとっている。またドタバタ喜劇の映画『ヘルプ!』と絡めて聴くとコミックソングのようにも聴こえてくる。
このように解釈の幅を広く許容する歌詞の構造を、私はとてもいいと思うのである。
ここでJポップの話をしたい。
平成以降の我が国のポップソング=Jポップは、歌詞の情報量が多い音楽である。歌詞は極めて具体的で、解釈の幅が狭い。それどころか「この曲は○○が□□すればいいなという願いを込めて作った曲です」など、作者が込めた意味を説明したりする。
ひるがえって『ヘルプ!』は一見ラブソング、もしやコミックソング、しかしその実はメッセージソング、ジョンの心の叫びソングだった──。
いいではないか、楽しいではないか。
「どんな解釈でも受け入れてやる」──そんな、実にビートルズ的な奥行きを持った『ヘルプ!』の歌詞は、つまるところ初期・中後期を超えた「通期ビートルズ」そのものだったのだ。
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