【追悼 美輪明宏さん】寺山修司と三島由紀夫…2人の天才との運命的な出会い

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三島由紀夫は寺山に「彼を俺の映画に貸してくれないか」と申し出た

 舞台を見た三島由紀夫は美輪の鬼気迫る演技を“詩的猥雑さの極致”と絶賛。寺山に「彼を俺の映画に貸してくれないか」と申し出た。寺山は「人は貸し借りするものじゃない。自由にどうぞ」とあっさり承諾。これ以降、美輪は三島の「黒蜥蜴」やジャン・コクトー原作「双頭の鷲」で舞台俳優としての才能を磨いていく。三島が言うところの「聖なる怪物」の本領を発揮するのだ。

「毛皮のマリー」「黒蜥蜴」「双頭の鷲」は、「愛の讃歌」と共に、美輪のレパートリーとなった。「愛の讃歌」は世界的シャンソン歌手、エディット・ピアフの波乱の生涯を描いた音楽劇で、美輪は作・演出・美術・衣装・主演と八面六臂の活躍。また、越路吹雪が歌って大ヒットした岩谷時子訳の「愛の讃歌」では原詞の意味が伝わらないと、新たに訳詞した。

 岩谷訳は「ただひたすら愛に生きる」というロマンチックな世界観だが、美輪は、「愛する人のためなら世界中の人を敵に回し、国を捨てても地の果てまであなたについていく」という原曲に近い激しいものだ。

 ここにも美輪の愛の峻烈さが分かる。3作品は渋谷・パルコ劇場で繰り返し上演された。

 コロナ禍もあって、2020年以降は舞台中止が相次ぎ、最後の舞台は2019年に新国立劇場・中劇場で上演されたパルコ・プロデュース「毛皮のマリー」だった。

 寺山死去の時も、美輪の「毛皮のマリー」の上演直前で、追悼公演となった。不思議なめぐり合わせというべきだろう。

 筆者に美輪を引き合わせてくれたのは九條今日子だ。1996年に渋谷・パルコ劇場で、ドイツの演出家、ハンス・ペーター・クロスが演出した「毛皮のマリー」の初日祝いの席で、「向こうはどうだった?」と聞かれたので、「全然ダメ。比べものになりません」と正直に感想を述べた。

「向こう」というのは同じく渋谷のシアターコクーンで別のカンパニーが上演していた寺山作、蜷川幸雄演出の「身毒丸」だ。アンチ寺山だった蜷川演出には寺山リスペクトが感じられなかった。

「そうでしょ」とニッコリした九條が美輪に「ほら、ヤマちゃんが向こうより断然いいって褒めてるわよ。この人、寺山が大好きで、信頼できる人だから」と言うと、「あら、ありがとう」とほほ笑んだ美輪が、私の手をギュッと握ってハグした。それから、結婚式場で来賓に挨拶する新婚カップルよろしく手をつないだまま、しばらくの間、私を傍らから離さなかった。その時の美輪の心遣いが懐かしく思い出される。

 美輪は、姿形だけでなく教養百般に通じ、それをひけらかさない「愛とやさしさ」を持つ精神的な美しさを最も尊いものとして「麗人」と呼んだ。

 長崎で被爆し、ジェンダー差別や偏見と闘い、戦争とファシズムに警鐘を鳴らし続けた美輪明宏。彼こそが最期まで独自の美学を貫いた永遠の麗人だった。=文中敬称略

(山田勝仁/演劇ジャーナリスト)

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