感情を揺さぶる!読んだり書いたり日記本特集
「季刊日記2」榎本空、大白小蟹ほか著
「読む」ことで誰かの何げない日常から想像力をかき立てられ、「書く」ことで自分自身の内面を探ることができる。日記には、感情に働きかける独特の魅力があるものだ。今回は、日記専門の文芸誌や普通の誰かの普通の夜の日記、そして日常の一瞬を切り取り200文字の日記をしたためるユニークな試みなど、日記の奥深さに迫る4冊を紹介する。
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「季刊日記2」榎本空、大白小蟹ほか著
日記専門の文芸誌である本書。日記を書くこと、そして読むことの魅力を多角的に探求する企画で構成されている。
巻頭特集は「21人の1週間」。さまざまな立場の執筆者による、同じ1週間の日記が読める。例えば1月14日の水曜日。マンガ家の大白小蟹氏は、久々に打ち合わせに出たせいでカーディガンを着てくるのを忘れてしまった。1日ぐらいなら薄着でいけるかと悩むも、前々から目をつけていたユニクロのカーディガンを買うに至る。一方、歌人の大前粟生氏は早々と花粉症を発症しており、憂鬱になっている。そして作家の小原晩氏は、昨日は日記を書かなかったせいで何をしていたか思い出せないとつづるのだった。
「日記のくるしみ」という特集企画も組まれている。日記は書き続けないと“続けられなかった人”のレッテルを貼られる。そんなくるしみを経験した読者からのエピソードがまとめられている。
日記の奥深さを考察しながら、その魅力を再認識できる。 (日記屋月日 2178円)
「5秒日記」古賀及子著
「5秒日記」古賀及子著
日記といえば、朝から晩までの出来事をまるっと書く人もいるだろう。しかし、一日の中のだいたい5秒の出来事を、200字程度で書いたらどうか。本書は、ウェブサイト「北欧、暮らしの道具店」で連載されてきた試みの書籍化である。
例えば、7月14日金曜日の日記。夕食に冷ややっこを出した著者は、醤油差しを冷蔵庫から出し、食卓に持っていく前にハタと思い立ち、爪楊枝で注ぎ口と空気穴をブスッと刺す。醤油差しが古く、毎回詰まって醤油が出なくなるのだが、いつも食卓に出してから気づく。それが今日は、あらかじめ気づいて穴を開けておいた。そのことを子どもたちに披露したら「えらい!」と褒められ、気分よく夕食を味わえたのだった。
醤油差しの詰まりを取っただけで、本来なら日記に書くまでもない行動だ。しかし、暮らしの中のささいな出来事に思いを寄せれば、立派に文章となり、日記に落とし込むことができる。今日からでも始められそうだ。 (ホーム社 1870円)
「言葉と出来事」阿部大樹著
「言葉と出来事」阿部大樹著
精神科医の著者による、哲学的思考が詰まった日記である。
日記を書く動機のひとつに、自分の記憶が途切れ途切れであるのが恐ろしいし、悲しくなることを挙げている。たとえ苦しくても、記憶はひとつながりである方がいいと著者。
子育て中であるため、子どもに関する記述が多い。ある日は、「どうしてクリームパンダがあるの?」と問われ、答えようがなく困惑したことがつづられている。しかし、子どもの質問に対して、自分と妻とでは答え方が異なることにも気づく。
例えば、駐車場にある自動車を指し、「どうして車があるの?」と問われた場合、著者は「誰かが置いていったからだよ」と、そこに至るプロセスを説明する。一方妻は「君もおねんねするでしょ。車もおねんねするのよ」と類似の現象を挙げる。子どもの疑問文は、選択肢が“ない”と感じさせるほど、幅のある問いかけなのだ。
通り過ぎてしまう日常を言葉で切り取る、日記の醍醐味が伝わる一冊だ。 (作品社 2860円)
「何も起きない夜日記」月と文社編
「何も起きない夜日記」月と文社編
無名の人々が「平常運転の一日の夜」をつづった日記集。
24歳の会社員は、帰宅後すぐにSNSをチェックした。高校時代にスクールカーストで“一軍”だった先輩や後輩、そしてキムタクの娘などのインスタを覗き、旅行先の宿や身に着けているものの値段を調べ、自分の生活水準との差に絶望するためだ。猛烈に劣等感を刺激されるが、このときの感覚からしか得られない“栄養素”がある。絶望は、自分自身の輪郭をはっきりさせるのにちょうどいいとつづる。
スパイスカレー屋の料理長は、今日も午後8時になると妻子をリビングに残して寝室に逃げ込んだ。50歳を過ぎてもひどい人見知りであるがゆえ、周囲の人々に全力で気を使う。そして、無意識にピエロを演じることで疲れ果てる。だから、ひとりで過ごす夜は何物にも代えがたいほどご機嫌になるのだ。
日記だからこそ赤裸々につづられた誰かの夜が、不思議と誰かの背中を押す物語になっているのが興味深い。 (月と文社 1980円)



















