俳優・西岡德馬さん78歳「万雷の拍手をいただくことが一番の栄養、サプリメント」

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西岡德馬さん(俳優/78歳)

 ドラマ映画、舞台で抜群の存在感が人気の西岡德馬さん。昨年は海外で数々のドラマ賞を獲得した「SHOGUN 将軍」(ディズニープラス「スター」)で名シーンを演じて注目された。芝居が生きがいであり、生きる力という西岡さんに話を聞いた。

■絶賛された第8話の切腹シーン

 時代劇の「SHOGUN」はいろんな賞をいただいたけど、多くの人が「よかった」と言ってくださった。舞台でいえば、カーテンコールで万雷の拍手をいただいたようなもの。何よりうれしかったですね。それが僕が生きていく上で一番の栄養、サプリメント、一番のクスリです。

「SHOGUN」が最初に注目を集めたのはエミー賞。授賞式には僕も行っていました。最優秀主演男優賞で「ヒロユキ・サナダ」と名前が呼ばれた時は立ち上がって拍手したけど、作品賞にも選ばれて僕らみんなでステージに出て行く時は真田広之を抱きしめ、耳元で「俺たちは日本のためにすごいことをやったんだぞ」と叫んでいました。あいつも泣いてましたね。そしてまた2人で頑張ろうと肩を抱き合いました。

 撮影でカナダのバンクーバーにいたのは8カ月です。現地で真田に会った時には、こう言った。

「俺がなぜオーディションを受けて、ここに来たかわかるか。俺は日本の精神とか侍の精神、武士道精神をちゃんと伝えたかった。これまでハリウッドで作る時代劇は首をかしげることばかり多すぎる。使う音楽にしろ、着物にしろ、しぐさにしろ、あれは日本じゃない。チャカチャカチャンチャン、チャンチャンチャ~ンなんて中国じゃないか。それじゃ困るんだ」

 実は「SHOGUN」の前には三島由紀夫さんの映画を撮りたかったんです。それがコロナと資金繰りがうまくいかなくて、できなくなった。だけど、世界中に武士道精神を伝えたい。真田には「俺はそのために来た。真田がいて、俺もついていて、こんなものかって言われないようなドラマにしよう」と固い握手を交わし、あのドラマは始まったんですよ。その結果、大きな夢を実現できた。すごくうれしかったですね。

 プロデューサーも務めた真田は吉井虎永(徳川家康)、僕が演じたのは忠臣の戸田広松(細川藤孝)です。広松は虎永に進言して切腹することになる。一番はやっぱりあの切腹のシーン。実は最初は5人で切腹することになっていたんです。だけど、5人となると切腹して血の海になり、集団ヒステリーみたいになるでしょ。でも、それでは切腹の真意が伝わらないのではないか。主君のためとはいえ、やたらと死ねばいいというものではない。この脚本は違うなと思いました。

 それで真田に「ここは俺ひとりにしてほしい、総合プロデューサーのジャスティン・マークスに話をしたい」と言いました。コロナの中、プロデューサーら集まった4人でマスクをして話し合った。僕は言いたいことをスマホの翻訳機能を使い、紙に書き、それを見ながら訴えました。さらに、切腹する間際に「今生のお別れにございます、と言わせてくれ」とお願いもしました。

 それはどういう意味かと聞かれたので、「私は先にいってあなたをお見守りします。また来世で会いましょう」という意味を込めたセリフだと説明しました。ジャスティンは僕の顔をジッと見ていましたね。そして30秒くらいたってから「OK」が出て、そのセリフも足してもらうことができたんです。

 あのシーンはみんなに「すごくよかった」と言われました。それが全10話の第8話。「もし第10話とかだったら西岡さんが助演男優賞だったね」と言う人もいました。

「SHOGUN」を見て、みんな喜んでくれて、その喜びが自分にも返ってきたと思っています。作品の評価がいいのが、とにかく一番です。

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