著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(3)常識をどれだけ外れるか、時代をどれだけ裏切るか。それが自分の価値観

公開日: 更新日:

写真家・加納典明氏(83)

 小説、ノンフィクションの両ジャンルで活躍する作家・増田俊也氏による新連載がスタートしました。各界レジェンドの一代記をディープなロングインタビューによって届ける口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇

増田「草間さんが『こうしなさい』みたいに?」

加納「そう。『あなたはこっちでこうしなさい』と言ったり『あなたはこっちの人と』などとやって歩き回って、男や女の体に水玉模様を描いていく。でも、彼女はパフォーマーたちがやることをわかっているらしくてそんな出しゃばりじゃなかったです。それで俺、その何日か後に、そのパフォーマーたちにタッド若松*のスタジオへ来てもらって、パフォーマンスのとは違う写真も随分撮って、だから、私としては、あの時代の、やっぱり代表作の一つですね」

※タッド若松:写真家。1936年生まれ。1962年に渡米し、リチャード・アヴェドン、バート・スターンらに師事する。後に妻になる鰐淵晴子をアメリカヒッピー文化を背景に撮影した「イッピー・ガール・イッピー」で一世を風靡し、各国で評価される。

増田「『FUCK』っていう題名がまたすごいですよね」

加納「普通『FUCK』なんてタイトルつけないですよね」

増田「1969年*ですしね」

※1969年:アポロ11号が月面着陸を成功させた熱狂の年。日本では昭和44年。東名高速道路が全面開通するなど、日本のインフラが次々と整備されるなか、学生運動が大きくなり、東大安田講堂事件に警視庁が機動隊を大量投入。日本プロ野球では金田正一が400勝の偉業を達成、競馬界ではスピードシンボリが日本馬で初の凱旋門賞に挑戦した。セイコーが世界初のクオーツ時計を発売。

加納「僕もはじめは少し迷いましたけど、4文字で、シンボリックでいいなと思ったんです」

増田「現在はある程度使われてますけど、当時の日本では知られてない言葉ですよね」

加納「そうなんですよ。『ファックって何?』っていうぐらいで。向こうでは『おまえ、よくこんなタイトルつけてやるな』って言われたぐらいです。でもそういう普通はやらないようなことが僕は好きなんです。並外れたっていうことが、僕は好きなんですよね。当たり前に『お見事』みたいなのって嫌いなんですよ。『はい、よくできました』みたいな言葉じゃなくて、飛ぶってわけじゃないんだけど、違うとこからの価値というんですか、違うとこからのアプローチというか、常識をどれだけ外れるかというところが僕の価値観なんです」

増田「そのときの26歳の典明さんと現在の83歳の典明さんの違いはありますか」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった