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増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(4)草間彌生さんを素っ裸にして100億円の絵の上で撮ってみたい

公開日: 更新日:

 小説、ノンフィクションの両ジャンルで活躍する作家・増田俊也氏による新連載がスタートしました。各界レジェンドの一代記をディープなロングインタビューによって届ける口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇

増田「乱交パーティー撮影のとき以外は本当にまったく草間さんとは関わらなかったんですか。例えば酒を飲んだりとか、お話をしたりとか、あるいは抱いたりとか」

加納「ないんですよ。全然ない」

増田「あとで考えればもったいないことですね」

加納「草間さんというのはご存じだと思いますが、別に常人なんだけど、コミュニケーションがうまく取りにくかったんですよね。だからせめて草間さん自体を撮っときゃよかったなというのが残りますけどね」

増田「僕はもうそこはすごく聞きたかったとこなんです」

加納「もう少しニューヨーク*にいて人間としての草間彌生と関わりがあったら、また違うことやれたと思う。東京に帰ってきて『俺はやっぱりニューヨーク行かないとダメだ』と思った。『東京はかったるい』と。『やっぱりニューヨークだ』と。ニューヨークの街に立つとなんか違う血が流れ出すんです、俺の中で。街を感じたり、人に感じたり、話してる価値にしたって違うと。だから、とにかくニューヨーク行かなきゃと思った。でも、帰ってきて『FUCK』の個展をやったら、日本でめちゃくちゃ売れ出しちゃったんですよ。仕事が殺到した。あれやってくれ、これやってくれと。それで日本から離れられなくなっちゃったんです」

※ニューヨークと芸術:かつて世界の芸術の中心地だったのはフランスのパリだったが、20世紀後半から古い型を破って中心となっていくのはニューヨークだった。メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館などがあって表の芸術の中心であるだけではなく、現代の新しい芸術の波はいつもニューヨークから興る。 

増田「それはちょっときつかったんじゃないですか。日本に拘束されたみたいで。日本国内での名声や金銭ということだと、その後はビクトリーロードを歩むわけですけど、芸術家としては『ニューヨークにもう一度』と思っていたと」

加納「向こうで知り合ったいろんな芸術家たちに何度も何度も言われたしね。『カノウはフィーリングがこっちに合ってる。移住してこい』って」

増田「行きたかったですか」

加納「うん。あれが僕の人生でね、失敗とは言わないんだけど、あの時代にニューヨーク行かなかったっていうのは、口が大きくなるかもしれないけど、あのとき行ってればニューヨークで一番取ってたと思いますよ、何らかの形で」

増田「自信ありましたか」

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