天涯孤独で踊り続けて(1)ステージのメインから裏方の荷運びまで「1人5役」
「皆さんに喜んでもらえて大成功です」
後日、還暦公演について聞くと、せいかはそう言ったあと、少し小声になった。
「実はあのときは一回も練習できないまま、ぶっつけ本番やったんですよ。そんな、ステージをなめるようなことは絶対したくないんですけど、なんかもう、ゲストのこととか、たくさん準備せなあかんし、これ用意せなあかん、あれやらなあかんとか、いっぱいありすぎて、自分のことに集中する余裕が全然なかったんです」
それでも堂々と踊り切ったのはさすがだが、なるほどとうなずくところはあった。せいかは踊り子チーム「ハニートラップ」のリーダーなのである。ストリップのジャンルで「素人大会」と呼ばれるショーを行い、プロ興行と違い、観客とゲームをしたりもする興行だ。せいかは自分の出番以外にチーム全員でのパラパラでピンク・レディーのメドレーを披露したが、その舞台裏で毎日メンバー約5人を編成し、それぞれの演目を決め、衣装を選び、選曲し、振り付けまでの演出を手掛けていた。全員の衣装や道具類の搬入、搬出までこなしていた。