「爆心を見つめて」鎌田七男、宮崎園子著

公開日: 更新日:

「爆心を見つめて」鎌田七男、宮崎園子著

 核兵器が使われたとき、人の体と人生にどんな現実がもたらされるか。広島大学名誉教授の鎌田七男氏は、そんな問いに医師として長年関わってきた。彼は、広島の爆心地から500メートル以内にいたものの生き残った78人に追跡調査を行ってきた。本書は、70年近くにわたって被爆の実態と向き合った鎌田氏のこれまでの人生をたどりながら、そこで発見し、気づき、確信した物事が何だったのかを明らかにする警鐘の書だ。

 たまたま建物の中にいた、出勤時間が早かったなど、原爆投下時の偶然が生死を分けた。そこで生き残った者たちは、人が人の形でない姿で亡くなっていく地獄絵図を目の当たりにして心に傷を負いつつ、生涯放射線という目に見えないものとの闘いに翻弄された。生き残った被爆者の中には、孫が白血病で亡くなったことを苦にして自死した者もいた。被爆者と接してきた鎌田氏は、染色体レベルで人間を傷つける核兵器を「生涯虐待」とし、原発も「平和利用ではなく商業利用だ」と断言。チェルノブイリや福島の事故にも言及しながら、核兵器のない世界への願いを切に伝えている。

(朝日新聞出版 2090円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    豊昇龍が長期離脱で大の里までピンチ! “ひとり横綱”の重圧で「共倒れ」にならないか

  3. 3

    菊池風磨はジャニー喜多川氏の“推薦”もあって慶大総合政策学部に進学 仕事の合間に1日10時間の猛勉強

  4. 4

    北島三郎(2)2018年に次男が急逝「息子だけど、音楽の、とても良い仲間でもあった」

  5. 5

    SNSで大バズリ! 高市首相の「激ヤバ発言動画」発掘がブームに…中には悪質な切り取りも

  1. 6

    『ヘイ・ブルドッグ』ポールの見事なアドリブに感じるコーラスグループのすごみ

  2. 7

    有望高校球児の進路事情に異変! 青学大は「ドラフト指名と同等の価値」「明大より上」とプロスカウト

  3. 8

    KDDIが楽天モバイルへの「ローミング」終了でライバルの“品質低下”を狙い撃つ

  4. 9

    新庄日本ハム舵切り「2位シフト」 騙し騙し起用の万波中正をついに登録抹消

  5. 10

    東京・銀座、KK線再生で誕生、東京スカイコリドーは高さ8.5メートル天空の遊歩道