「時代と寝た男」加納典明(24)生徒会長から奪った小学校の同級生と結婚しました
法的に2回、結婚式は3回
加納「正月に彼女が着物を着て訪ねてくるじゃない。そのときも心の中では奇麗だなと思っているのに、違和感のほうが強くて『帰れ!』って言ってしまったり。ひねくれていた。照れというか戸惑いというか、素直になれなかった。自分の中の純粋さと性衝動がせめぎあって。あれが性的な成長の始まりだったのかな。性的な成長というのは、精神的な成長でもあるわけだから、若い人には『自分の力で手づくりでやれよ』って言ってやりたいね。アダルトビデオを見てマニュアル的に覚えるものじゃない」
増田「なるほど。それにしても彼女に怒ってしまったというのが面白いですね」
加納「うん。自分にとって一番汚れていない大事な人が、性的な行動に走って汚れてしまう。それは許せない。もちろんそこには愛するがゆえの抵抗みたいなことがあったわけだけど、『でも相手は自分じゃないか』と、今思うと滑稽ではありますね」
増田「男女と恋愛を知り尽くした典明さんならではの面白い考察ですね」
加納「夜中によく電話をしていたんです。彼女からかけてきてくれることが多かったけど『リーン』と鳴ると親が起きてしまうから、電話の前で待っていて『リ』くらいでパッと受話器を上げるわけですよ(笑)」
増田「昭和の若者カップルにありがちですね。僕も似たようなことありました」
加納「うん。あるとき、電話をしていて話が盛り上がって『今すぐ会いたい』ということになった。夏の終わりでしたね。自転車に乗って行きましたよ、彼女の家まで。それから彼女を後ろに乗せて、田んぼのほうへと自転車を走らせて、田んぼのあぜ道の中でセックスしたんです。お尻がスースーしてね(笑)。性的な快楽とか、彼女がどうだったかなんてことはあんまり記憶にないんだけど、ドキドキしたことだけはよく覚えてますよ」
増田「素晴らしい思い出ですね」
加納「それからも関係は続いていって、彼女と結婚しました」
増田「それはすごい!」
加納「私は法的には2回、結婚式は3回してますけど、最初は幼友達と結婚したんですよ。他の女性を知ったのはそれからですね」
増田「意外に真面目な青春時代ですね(笑)」
(第25回につづく=火・木曜掲載)
▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。
▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が好評発売中。