「時代と寝た男」加納典明(24)生徒会長から奪った小学校の同級生と結婚しました
作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。
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増田「典明さんのお父さまというのはどういう方だったんですか」
加納「近所のおじさんとはちょっと違ってたね。コミュニスト(共産主義者)だったんです。今の自分も、やっぱりそういう父の影響が大きかったと思う。先進的で。『VOGUE』とか、普通の人では手に入れられない当時としてはものすごく珍しい洋雑誌が家にあったりしたからね」
増田「名古屋市内ですよね」
加納「そう。当時は大門の近くに住んでた」
増田「大門というと名古屋駅の裏ですね。中村遊郭の跡とか、あの辺りですね」
加納「そう。下町でね」
※名古屋の大門地区(おおもんちく):名古屋駅西口から歩いて5分ほどのところにある昭和感たっぷりの下町地区で、戦前は中村遊郭として栄えた。その後、商店街などになったがバブル期に多くが潰え、建物だけが残る店が多い。しかしそのレトロな風情から休みの日には町歩きのファンがカメラを手に歩いたりしている。
増田「初恋は何歳くらいのときでしたか」
加納「小学5年のときですね。相手は同級生の女の子。俺は不良ではなかったけど、逆に真面目な生徒でもなかった。やっぱりどっちかというと芸術的というか、そっち向いてたからね。そのころ生徒会長をしていたヤツのガールフレンドが好きになって、俺がその彼女をとっちゃった(笑)」
増田「小学5年生っていうのはませてますね」
加納「うん。ませてたと思う。もちろんお互い処女と童貞ですよ」
増田「さすがにそうですよね(笑)」
加納「初めてのキスは彼女とですよ。中学2年のとき。『キスしたい』って思って、キスするだけのために手を引いて名古屋から鳴海というところまで名鉄電車にゴトゴト乗って。山の中で初めてキスを体験したんですよ。お互いにドキドキしながら(笑)」
増田「へえ。どんな感想を持ちましたか」
加納「うん。キスしたかったくせに、キスした途端にキスなんて異常なことをさせた相手がすごく汚く見えてね。論理的には矛盾なんだけど、意識と欲望の感覚が混乱して。それで思わず『もう帰れ!』なんて言ってしまって、彼女がベソをかきながら帰っていって」
増田「それはひどいな(笑)」