「一銭五厘たちの横丁」児玉隆也著 桑原甲子雄写真
「一銭五厘たちの横丁」児玉隆也著 桑原甲子雄写真
写真家の桑原甲子雄氏は、昭和18年、集められたほかの写真家とともに東京・下谷区(現台東区)で出征軍人の留守家族を撮影。戦地に「銃後」の姿を送るためだった。
その32年後、写真に写る氏名不詳の99家族を捜し、話を聞いた傑作ルポルタージュの復刻。
ネガ袋に書かれた町名を頼りに、在郷軍人会世話役や町会長、古老を訪ね歩き写真を見せるが成果はゼロ。そんな日々が続いて1カ月後、町の名士の一言でいまは三ノ輪1丁目と変わった金杉下町にたどりつく。教えられた間口9尺の土間をのぞくと、写真に写る女性の30年後の姿があった。
佐藤トメさんというその女性から写真に写る7家族の名前が分かった。以降、一銭五厘のはがきで出征した兵士と家族の戦中・戦後を描き出す。
(筑摩書房 1100円)