「時代と寝た男」加納典明(25)中学2年で初体験、行為を終えて感じたのは腹立ちと嫌悪だった
「こんなひどいことをする俺を受け入れるのはどういうことだ」
加納「あれは不思議な感覚でね。性に目覚めたってのはもちろん、自然に性欲って出てくるよね。少年でも。どうだったんだろうな、あれ。最初にそういうことして、そういうことをやらせた彼女に、俺は頭きたわけよ。『おまえにこんなひどいことをやる俺を許すってどういうことだ、受け入れるってのはどういうことだ』と。やっといいてそれはねえだろって話だけど、こっちがやりたくてしょうがなかったくせに、やらせたその子に、俺はなんかすごく腹立ったわけだ。軽蔑したんだ。こういうひどいこと、まあ、ひどいこととは思わないけど、昔は性のイメージって、今と違うからね。情報もないですからね。で、なんか腹立ってきて。それからちょっと疎遠にしたことはあるね。中学生のとき」
増田「当時の中学生がそういうこと知るっていうのは、周りと比べたらかなり早いですよね」
加納「うん。早いよね、ほんとに。だから、自分から湧いてくる欲望が、自分でも半分嫌だったんだろうね。そういう欲望を持っていることに対して。でも、その欲望に勝てないじゃない。そこはストレートのとこが俺は強いから、それはそれ、これはこれだということで」
増田「それはそれというのは、自分の中で嫌悪感はあるけれどもということですね」
加納「うん、そうそう、欲望、性に対するものというのは、今は混乱はもうしないけど、1つの矛盾は感じてたよね」
増田「矛盾は何歳ぐらいまで?」
加納「いや、ずっとそうですよ。もう俺はセックスは終わったけど」
増田「いつ終わったんですか。いつ打ち止めた?」
加納「70歳過ぎぐらいまではあったな」
(第26回につづく=火・木曜掲載)
▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。
▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。