著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(26)女性との関係は70歳過ぎまで現役、「でも、常に性に対する矛盾があった」

公開日: 更新日:

 作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇

増田「70歳すぎくらいまではセックスはしていたと」

加納「うん。そう。してた」

増田「それまでずっと性欲と自分の矛盾を?」

加納「そうだね。相手もいろいろ変わるけども、なんつうんだろう、快楽に対しての1つの軽蔑とは言わないけど、人間というものの1つの本質がそこにあるわけだよね。動物とは違うわけだよ。動物はもちろん快楽を追っかけるんだけど、快楽だけじゃないよね。種の保存だよね。人間がそこで、快楽だけでいろいろやることに対する疑義というか、そういうのはずっとあってね」

増田「読者がずっと見てきた典明さんのイメージと真逆ですよね」

加納「うん。だから、それは、自分でも矛盾はあった」

増田「これが初めて活字になると、みんなびっくりしますよ」

加納「うん。でも『嘘つけコノヤロー』って言われるかもしれないけどね(笑)」

増田「いや、そんなことはないです。でもあそこまで深くエロスとか性について考えてた人が、そういう矛盾も抱えながら思索していたと知ると、読者も見方が変わるんじゃないですか」

加納「そうだね。俺は『平凡パンチ』とか『テンメイ』なんかでやってたことは、あれは1つの社会に対する反抗というか、俺なりの攻撃だったんだよね。社会に物申すっていう。『違うだろう』っていう」

増田「そういう反逆精神というのはお父さまや、お母さまから?」

加納「うん。おそらくね」

増田「お父さまはどんなお仕事の方だったんですか」

加納「図案家*。今でいうグラフィックデザイナー。薬の箱の裏に効能とか材料とか書いてあるじゃない。今はもう人の手でなんか書かないけど、ああいうのなんかを書いてた。超小さい字を、面相の細い筆で書いていく。あれはやっぱりすごかったな」

※図案家(ずあんか):江戸時代、戦前、戦後を通じて在野の日本の絵の世界を支えた職業。小説の挿絵を描く者なども含まれ、英語にすればグラフィックデザイナーだが、日本語ではもう少し広い意味を持つ。たとえば竹久夢二なども図案家と呼ばれることがある。

増田「典明さんは子供の頃それを見て育ったと」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    山崎まさよし、新しい学校のリーダーズ…“公演ドタキャン”が続く背景に「世間の目」の変化

  2. 2

    ポンコツ自民のシンボル! お騒がせ女性議員3人衆が“炎上爆弾”連発…「貧すれば鈍す」の末期ぶりが露呈

  3. 3

    ラウールが通う“試験ナシ”でも超ハイレベルな早稲田大の人間科学部eスクールとは?

  4. 4

    山崎まさよし公演ドタキャンで猛批判 それでもまだ“沢田研二の域”には達していない

  5. 5

    Snow Man目黒蓮と佐久間大介が学んだ城西国際大メディア学部 タレントもセカンドキャリアを考える時代に

  1. 6

    田村亮さんが高知で釣り上げた80センチ台の幻の魚「アカメ」赤く光る目に睨まれ体が震えた

  2. 7

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

  3. 8

    草間リチャード敬太“全裸騒動”にくすぶる「ハメられた」説…「狙った位置から撮影」「通報が早い」と疑問視する意見広がる

  4. 9

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  5. 10

    国民・玉木雄一郎代表の“不倫相手”元グラドルがSNS凍結? 観光大使を委嘱する行政担当者が「現在地」を答えた

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    山崎まさよし、新しい学校のリーダーズ…“公演ドタキャン”が続く背景に「世間の目」の変化

  2. 2

    ドラフト目玉投手・石垣元気はメジャーから好条件オファー届かず…第1希望は「日本ハム経由で米挑戦」

  3. 3

    ソフトバンクに激震!メジャー再挑戦狙うFA有原航平を「巨人が獲得に乗り出す」の怪情報

  4. 4

    米価暴落の兆し…すでに「コメ余り」シフトで今度こそ生産者にトドメ

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 7

    大富豪の妻と離婚でファン離れ? イケメン既婚者俳優ディーン・フジオカの気になる今後

  3. 8

    自民×維新は連立早々に“成田離婚”も? 政策も理念も、「政治とカネ」に対する意識も、政治姿勢もバラバラ

  4. 9

    山崎まさよし公演ドタキャンで猛批判 それでもまだ“沢田研二の域”には達していない

  5. 10

    首相補佐官に就く遠藤敬氏に世間は「Who?」…維新の国対委員長が連立政権「キーマン」のワケ