それならば農薬を使わない植物工場の野菜は健康的なのか?
農薬の危険性を指摘したところ、「じゃ、植物工場の野菜のように、農薬さえ使わなければ問題ないのでは?」と言われたことがある。確かにそうだが、前回でも書いたように、私たちがなぜ野菜を食べるかを考えると、それほど単純ではないだろう。
ずいぶん前だが、ある研究者から「これからは植物工場の時代です」と言われたことがある。太陽光の代わりに光源をLEDに、土の代わりに培養液を循環させ、温度や湿度をすべて管理した中で野菜を育てる。つまり車を造るように、野菜を水耕栽培で大量生産すれば農薬の心配がなくなるというわけだ。
■香りも味も人工的
なぜ野菜を工場で生産するかというと、天候に左右されずに、青臭いにおいのない野菜も作れるそうだ。それを聞いて、思わず叫びそうになった。
野菜からにおいがなくなったら、野菜じゃないだろう? それにレタスをLEDで育てて本当においしいのだろうか。
すると彼は笑いながらこう言った。「においも味も人工的に作ればいいんです」と。慣行栽培の野菜は工業製品のようなものだと書いたが、これでは本当の工業製品だ。そんな野菜を誰が欲しがるのだろう。