「素晴らしき国」小路幸也著
「素晴らしき国」小路幸也著
社会学者の「私」は、教え子が提出したリポートに違和感を抱いた。リポートは、愛知から北海道に移住した28歳の女性の話を聞き書きしたものなのだが、その女性の言葉には物事を達観したような重みがあった。さらに、リポートに添えられた彼女の似顔絵が、先祖が秀吉に仕えた武将といわれる私の実家に伝わる掛け軸に描かれた女性とうり二つだったのだ。
理由を添えて彼女に面会を求める手紙を書くと、20年後なら会っても良いとの返事があった。20年後、今は東京に暮らす彼女に会いに行くと、彼女の容姿は全く変わっていなかった。不老不死だという彼女によると、掛け軸を描いたのは10歳の明智光秀だという。
不老不死の女性が戦国時代を終わらせるために造った「いよの国」を舞台に描く時代ロマン。
(角川春樹事務所 770円)