「鬼にきんつば」笹木一著
「鬼にきんつば」笹木一著
北町奉行所の同心、河原小平次は、圧倒的な剣の強さと鬼瓦のような容貌から「鬼の河原」と呼ばれ一目置かれている。しかし、顔に似合わず大の甘党で、誰よりも幽霊が怖いのは皆には内緒だ。
ある日、河原家が所有する長屋に新しい店子が入った。大家として挨拶に出向いた小平次は、新しい店子で遊行中の僧侶・蒼円から幽霊が出るのにこの家賃では高すぎると値下げを迫られる。聞き捨てならない小平次だが、蒼円の手が背中に添えられると、上がり框に女の幽霊が出現する。幼い頃から幽霊が見えるという蒼円によると、この幽霊は最近何者かに殺された人のようだという。しかし、奉行所の記録にそのような事件は見当たらない。(「鬼に金鍔」)
堅物の同心と幽霊が見える僧侶の異色コンビによる時代人情推理帖。
(新潮社 781円)