<26>帰国した元実習生が送り出し業のスカウトに回る悪循環
東京都内のIT企業に勤務するフエさん(29)は先日、ベトナムで実習生の送り出し業を営む知り合いから、こんな誘いを受けた。
「ウチの実習生を(日本で実習生を斡旋する)監理団体に売り込む仕事をしてほしい。副業でやってもらって構わない。年収は500万円を保証する」
フエさんは日本語が堪能で、営業向きの社交性もある。日本側の実習生需要も依然高く、売り込み先は簡単に見つかるだろう。しかし彼女は、報酬が魅力的な副業の誘いを断った。その理由をこう話す。
「実習生や留学生の日本への送り出しは、ベトナムで最も儲かっているビジネスのひとつです。でも、仕事は汚い。官僚に賄賂を払ったり、監理団体をキックバックや接待でもてなしたりして……。だからベトナム人は大きな借金を背負い、日本へ行くことになる。まさに人身売買です。いくらお金をもらっても、そんな仕事に関わりたくなかった」