はとバスの1年<1>仕事があることのありがたさがわかった

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 羽田空港にも近い東京都大田区平和島。屋外にある車庫には、お馴染みの黄色いバスが並んでいた。見渡す限りのバスの列。東京観光で有名な「はとバス」の本社だ。

「車庫に全車があるのは社員からすると異様な光景です。ほぼ止まってないのが日常だったのに」

 広報室課長の山本雄太さんがため息を漏らした。

 70年以上の歴史がある「はとバス」にとって、2020年は特別な年だった。オリンピック開催に向けた東京の観光バスツアーの充実、インバウンド需要の外国語対応ツアーの強化など、華やかな一年になるはずだった。それがコロナ禍で暗転、すべてが白紙だ。

 昨年4月の緊急事態宣言期間に続き、東京などで期間延長が決定した今回の宣言中の今、観光バスツアーは全便で運休している。車庫に並ぶバスは計114台。台数も前年から20台ほど減らした。

 バスガイド128人は自宅待機中だ。

「かわいそうなのは昨年春に入社した新人ガイド。通常なら1カ月の研修が明けた後のゴールデンウイークごろから初乗務なのですが、入社してもうすぐ1年というのにまだツアーデビューができていないんです」

 山本さんが残念そうに話す。

 さらに132人いる運転手もほぼ休業状態。1回目の緊急事態宣言で2カ月間休業したベテラン運転手は「最初は雇用が維持されたまま休めることがありがたかったが、1カ月も過ぎると、今後再開できるのか、仕事を続けられるか、不安がどんどん大きくなった」という。それだけに、1回目の宣言解除後の6月に一部ツアーが再開された時は「仕事があることが本当にうれしかった」と振り返る。

 とはいえ、多い日で1日80コース以上あったツアーが、1日1コースからの再開だ。利用者数は増えず、7月になっても郊外の日帰りツアーを含めてわずか数コースにとどまった。当然ながら業績も悪化する。

「夏の繁忙期の8、9月の利用者数は前年比で3%ほどにまで落ち込みました。感染症予防対策をしっかりやった上での再開でしたが……」

 山本さんは続ける。

「通常、バスガイドは車内で前に立ち、お客さまに向かって案内します。でも再開時は飛沫(ひまつ)を防ぐため進行方向を向き、しかも座席に座って話すようになった。定番のお客さまと一緒に歌うのも控えていました」

 バス全体に一体感が生まれる独自のコミュニケーションも自粛せざるを得ないのだ。マスク着用についてのトラブルなど、コロナ禍ゆえの苦労もあったという。

 そんな中、車庫に眠るバスを活用した“逆転の発想”の企画が、思わぬ反響を呼ぶことになる。=つづく

(取材・文=肥田木奈々)

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